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亀裂
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きれつ
ふりがな文庫
“
亀裂
(
きれつ
)” の例文
旧字:
龜裂
螺旋形
(
らせんがた
)
の階段は一階から屋根下まですっかり
亀裂
(
きれつ
)
して、こわれた貝殻の内部のような観を呈している。階段は二連になっている。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
あとで気がついたのであるが、自分の足元から一尺と離れないところに幅二寸ほどの
亀裂
(
きれつ
)
ができて、その口から
代赭色
(
たいしゃいろ
)
の泥水を
地異印象記
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
尊氏と直義との和解を、ひろく世間に知らせる意味と、大きな
亀裂
(
きれつ
)
を表面化した武士どもの心を
溶
(
と
)
け合せようという目的もこれにはあった。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
まず、目についたのは、恐ろしいアスファルト路面の
亀裂
(
きれつ
)
だ。落ちこめば、まず腰のあたりまで
嵌
(
はま
)
ってしまうであろう。
棺桶の花嫁
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
私の家も壁に
亀裂
(
きれつ
)
が出来たぐらいで、殆どこれと云う損害もなしに済んだのは、全く何が仕合わせになるか分りません。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
遠い遠い昔のこと、もちろん人間などまだ地球上に現れなかった時代、おそらく数千万年もの大昔に、太平洋の深海の底に、大きい
亀裂
(
きれつ
)
がはいった。
黒い月の世界
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
あたかも春の雨のように、音楽の奔流は冬に
亀裂
(
きれつ
)
したこの地面中に吸い込まれていた。恥辱も悲痛も憂苦も、今ではその神秘な使命を現わしていた。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
かなり以前から多少
亀裂
(
きれつ
)
でもはいって弱点のあったのが地震のために一度に片付いてしまったのであるらしい。
断水の日
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
木蔭
(
こかげ
)
の少ない町中は瓦屋根にキラキラと残暑が光って
亀裂
(
きれつ
)
の出来た往来は通り魔のした後のように時々一人として行人の影を止めないで森閑としてしまう。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
が、あの大地震のような
凶変
(
きょうへん
)
が起って、一切の社会的束縛が地上から姿を隠した時、どうしてそれと共に私の道徳感情も
亀裂
(
きれつ
)
を生じなかったと申せましょう。
疑惑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
見渡す限り霜白く墨より黒き水面に
烈
(
はげ
)
しき
泡
(
あわ
)
の吹き出ずるは老夫の沈める
処
(
ところ
)
と覚しく、薄氷は
亀裂
(
きれつ
)
しおれり。
夜行巡査
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
寺でも経堂その他の壁は落ち、土蔵にもエミ(
亀裂
(
きれつ
)
)を生じたが、おかげで
一人
(
ひとり
)
の
怪我
(
けが
)
もなくて済んだと書いてある。本陣の主人へもよろしくと書いてある。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
月はいま、その建物の屋根から電光形に土台までのびていると前に言った、以前はほとんど眼につかぬくらいだったあの
亀裂
(
きれつ
)
をとおして、ぎらぎらと輝いているのであった。
アッシャー家の崩壊
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
根元のところから始った
亀裂
(
きれつ
)
が、布を裂くような音を立てながら、眼にもとまらぬ早さで
電光
(
いなずま
)
形に上のほうへ走りあがってゆき、
大巾
(
おおはば
)
な岩側が
自重
(
じじゅう
)
で岩膚から
剥離
(
はくり
)
しはじめた。
キャラコさん:04 女の手
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
父と兄との間にはもう大きな
亀裂
(
きれつ
)
が入っていて、いつも以上に不機嫌になっていた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
亀裂
(
きれつ
)
した肉のあいだからしろい光りだけを移動させ
原爆詩集
(新字新仮名)
/
峠三吉
(著)
客観的には、彼の知性というものが、いまほど危ない
亀裂
(
きれつ
)
を呈した
例
(
ためし
)
はあるまいと思われるのに、彼自身には、その正反対が信じられていた。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その二つの
穹窿
(
きゅうりゅう
)
、ことに新しい方の一七四〇年のは、
囲繞溝渠
(
いじょうこうきょ
)
の
漆喰工事
(
しっくいこうじ
)
よりもいっそう
亀裂
(
きれつ
)
や崩壊がはなはだしかった。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「このダムの設計は、はなはだまずいね。このへんにちょっと
亀裂
(
きれつ
)
でもはいろうものなら、ダム全体がたちまちくずれてしまう。あぶない、あぶない」
超人間X号
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
各局部で
亀裂
(
きれつ
)
し死滅しまた
蘇
(
よみがえ
)
る全存在のこの恐るべき危機を、あたかも、信仰も思想も行為も全生命もすべてが
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
多稜形
(
たりょうけい
)
をした外面が黒く
緻密
(
ちみつ
)
な岩はだを示して、それに深い
亀裂
(
きれつ
)
の入った
麺麭殻
(
ブレッドクラスト
)
型の火山弾もある。
小浅間
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
そうして、それとほとんど同時に、第二の私は丁度
硝子
(
ガラス
)
に
亀裂
(
きれつ
)
の入るような早さで、見る間に私の眼界から消え去ってしまいました。私は、
夢遊病患者
(
ソムナンビュウル
)
のように、茫然として妻に近づきました。
二つの手紙
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その管は当時既にはなはだしく
亀裂
(
きれつ
)
や割れ目がはいっていて、その後くずれ落ちてしまったが、今日でもなお跡が見えている。それはごく狭い管だった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
とるにたらぬ噂とは思うていたが、将と将とのあいだに、もし、さような
反目
(
はんもく
)
があるとせば、これは三軍の
亀裂
(
きれつ
)
、ゆゆしいひが
事
(
ごと
)
だ。案じられぬわけにゆかん。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
煉瓦と煉瓦をつなぐモルタルは、ところどころすごく
亀裂
(
きれつ
)
が走っているが、いかにも廃屋らしく見える。
千早館の迷路
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ルイザはその時、晩の
祈祷
(
きとう
)
からもどって来たところだった。窓の隅の例の好きな場所にすわっていた。正面の家の
亀裂
(
きれつ
)
のあるよごれた白壁が、ながめをさえぎっていた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
次には熱い茶わんの湯の表面を日光にすかして見ると、湯の面に
虹
(
にじ
)
の色のついた霧のようなものが一皮かぶさっており、それがちょうど
亀裂
(
きれつ
)
のように縦横に破れて、そこだけが透明に見えます。
茶わんの湯
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
扉
(
とびら
)
、鉄門、
庇
(
ひさし
)
、
框
(
かまち
)
、こわれた
火鉢
(
ひばち
)
、
亀裂
(
きれつ
)
した
鍋
(
なべ
)
、すべてを与え、すべてを投げ込み、すべてを押し入れころがし掘り返し破壊しくつがえし打ち砕いたのである。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
このゆるやかな傾斜の
窪
(
くぼ
)
と見えていたのは、太古の大地震のときにでも
亀裂
(
きれつ
)
していたかのような長い断層であって、その数里にわたる上へ板を敷きつめ土をかぶせ
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
太陽とともに彩っている。色彩の音楽。すべてが音楽であり、すべてが歌っている。金色の
亀裂
(
きれつ
)
のある
真赤
(
まっか
)
な往来の壁面、上方には縮れっ毛の二本の糸杉、周囲には
紺碧
(
こんぺき
)
の空。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
倒れそうな
石垣
(
いしがき
)
やくずれそうな
崖
(
がけ
)
、病菌や害虫を培養する水たまりやごみため、
亀裂
(
きれつ
)
が入りかかって地震があり次第断水を起こすような
水道溝渠
(
すいどうこうきょ
)
、こわれて役に立たぬ自働電話や危険な電線工事
一つの思考実験
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
そういう世代が作った危険な社会地盤の下には、当然、もっと大きな
亀裂
(
きれつ
)
を知らぬまに作っていた。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼女は四十歳近くなっていた。生活力が乱されて平衡を求める年齢だった。彼女の思想のうちには大なる
亀裂
(
きれつ
)
が生じた。しばらくの間、彼らは二人とも生存の理由をすべて失った。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
でその片すみに立ったまま、
陰鬱
(
いんうつ
)
に病みこわれ、絶えず酔っ払いの馬方どもがよごしてゆく朽ちた板囲いがあり、腹部には縦横に
亀裂
(
きれつ
)
ができ、尾には木の軸が見え、長い草が足の間にははえていた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
もしこのあいだに、傍らの竹中半兵衛が、くすくす笑ってくれなかったら主客のあいだに、ぴんと
亀裂
(
きれつ
)
が入ったまま、救い難い空気となってしまったかも知れなかった。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
恐るべき
黴菌
(
ばいきん
)
が内部に満ちあふれていた時代、恐ろしい響きのかすかに鳴り渡るのが足下に聞こえていた時代、
土竜
(
もぐら
)
が穴を掘るような高まりが文明の表面に見えていた時代、地面が
亀裂
(
きれつ
)
していた時代
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
大きなうつろを味方にまねき、ひいては、他日の結束にも
亀裂
(
きれつ
)
を生じまいものではない。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
トム公は、木靴の
尖
(
さき
)
で、卵の
殻
(
から
)
の両端をコツコツたたいた。歩きながら、小さな穴を開けようとして、ていねいに、殻の
亀裂
(
きれつ
)
をむしッている彼の姿は、いかにも無邪気なマドロスである。
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“亀裂”の意味
《名詞》
亀の甲羅のように走る裂けめや割れ目のこと。
(出典:Wiktionary)
亀
常用漢字
中学
部首:⼄
11画
裂
常用漢字
中学
部首:⾐
12画
“亀裂”で始まる語句
亀裂破