一途いちづ)” の例文
「まあ、お茶でも召されよ。さう一途いちづに思ひつめては事を仕損しそんじますぢや。世の中のことは成るやうにしか成りませんからのう。」
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
そんな時の彼の心持は、ただ一人で監禁された時には、無心で一途いちづ唐草からくさ模様を描きふけるものだといふ狂気の画家たちによほどよく似て居た。
ふくら雀は風にもまるる笑止せうしや正直一途いちづの源吾兵衛はひよいと世に出て人にもまるるもまるる
真珠抄 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
自分の芸境を一途いちづに貫いたまでの話である。なんの不思議もない。けれど、その時彼がかつて大衆の人気を博したいはゆる坂田将棋の亡霊にかれてゐたことは確かであらう。
聴雨 (新字旧仮名) / 織田作之助(著)
ただ乱暴一途いちづに品川へも足は向くれど騒ぎはその座ぎり、夜中よなかに車を飛ばして車町くるままち破落戸ごろがもとをたたき起し、それ酒かへさかなと、紙入れの底をはたきて無理をとほすが道楽なりけり
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
穂吉どのも、たゞ一途いちづ聴聞ちゃうもんの志ぢゃげなで、これからさっそく講ずるといたさう。
二十六夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
そのぬくもりさへ着物についてゐるのではないかと、自分の手をあてて見たりした、——やはり一途いちづに悦ばしかつたのだ、しかし旦那がああ云つたけど、一しよに行つていいものかどうか
一の酉 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
たとひ膚身はだみけがさずとも、をつとれた、とひ、はづかしいのと、口惜くやしいのと、あさましいので、かツと一途いちづ取逆上とりのぼせて、おつや兩親りやうしんたち、をつとのまだかへらぬうちに、扱帶しごきにさがつて
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いたましいほどに狂ひみだれたそのときの一途いちづの心が
藍色の蟇 (新字旧仮名) / 大手拓次(著)
「大変な愛国者で、正直一途いちづな男だつたね」
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
一途いちづに雪の上を進みぬ。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
一途いちづかねしと思ひしが
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
それが一旦いつたん兄さんがつまらない心を起して返り討ちにあつてから、落魄らくはく一途いちづ辿たどりはじめた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
おもひつるひたしのこゝろ一途いちづになりぬさりながらこゝろこゝろほかとももなくて良之助りやうのすけうつるものなんいろもあらずあいらしとおもほかてんのにごりなければわがひとにありともらずらねばきを
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
病気になつた気がれた一途いちづ雛罌粟ココリコが火になつた
真珠抄 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
喧嘩では無い、とてさすがに言ひかねて口をつぐめば、でもお前が大層らしく飛込んだから己れは一途いちづに喧嘩かと思つた、だけれど正さん今夜はじまらなければもうこれから喧嘩の起りッこは無いね
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
玉ならば真珠一途いちづなるこそ男なれ
真珠抄 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)