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じんしや
隨分長く
待たされたと
思つたが
實際は十
分ぐらゐで
熱海からの
人車が
威勢能く
喇叭を
吹きたてゝ
下つて
來たので
直ぐ
入れちがつて
我々は
出立した。
小田原から
先は
例の
人車鐵道。
僕は一
時も
早く
湯原へ
着きたいので
好きな
小田原に
半日を
送るほどの
樂も
捨て、
電車から
下りて
晝飯を
終るや
直ぐ
人車に
乘つた。
此時二人の
巡査は
新聞を
讀んで
居た。
關羽巡査は
眼鏡をかけて、
人車は
上だからゴロゴロと
徐行して
居た。
母屋の
入口はレールに
近い
方にあつて
人車から
見ると
土間が
半分ほどはすかひに
見える。
人車は
徐々として
小田原の
町を
離れた。
僕は
窓から
首を
出して
見て
居る。
忽ちラツパを
勇ましく
吹き
立てゝ
車は
傾斜を
飛ぶやうに
滑る。
空は
名殘なく
晴れた。
海風は
横さまに
窓を
吹きつける。