黒々くろぐろ)” の例文
垣根かきねのきわにわっているみかんのが、黒々くろぐろとして、夜風よかぜわたるたび、つきひかりにちかちかと、がぬれるごとくえました。
夢のような昼と晩 (新字新仮名) / 小川未明(著)
からすはどんなうつくしいいろまったろうと、たのしみにしながら、いそいでかがみまえへ行ってますと、まあ、おどろきました、あたまからしっぽのさきまで黒々くろぐろ
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
筋骨たくましい大兵だいひょう肥満の黒々くろぐろした巨漢と振袖然ふりそでぜんたる長い羽織を着た薄化粧したような美少年と連れ立って行くさまは弁慶と牛若といおう髯奴ひげやっこ色若衆いろわかしゅうといおう乎。
左膳があきらめて引きわたした壺の木箱を、高大之進の一団、おっとりかこんで、その場であけてみると! 思いきや、ころがりでたのは、黒々くろぐろなべが一つ!
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
なるほどそう云われて見ると、黒々くろぐろり上った高地の上には、聯隊長始め何人かの将校たちが、やや赤らんだ空をうしろに、この死地に向う一隊の士卒へ、最後の敬礼を送っていた。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
鉄漿おはぐろ黒々くろぐろと、今朝けさめたばかりのおこののは、かたみぎたもとんでいた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
陣馬じんば高原こうげんには、さまざまな植物の花が、つゆをふくんで黒々くろぐろねむっていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その胸を見ると、確に、すみ黒々くろぐろと、文字が書きつけてある。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
たらのいろは、黒々くろぐろとして、おおきな目玉めだまひかっていました。むすめは、その一ぴきをばんのさかなにしようと庖丁ほうちょうをいれました。さかなにくは、ゆきよりもしろく、つめたかったのです。
海のまぼろし (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、馬首ばしゅをあげておどってきたかげ! 黒々くろぐろとそこに見えた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はまったくれて、いつしか、夕焼ゆうやけの名残なごりすらなく、青々あおあおとしてみわたった、そらのたれかかるはてに、黒々くろぐろとして、山々やまやまかげかびがって、そのいただきのあたりに、きらきらと、一つ
太陽と星の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)