馬糞まぐそ)” の例文
中を開けて見ると、粉煙草が少々、薩摩さつま國府こくぶでもあることか、これはきざみの荒い、色の黒い、少し馬糞まぐそ臭い地煙草ではありませんか。
銭形平次捕物控:050 碁敵 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
何だとえ、馬鹿にしなんな。これでも米を食う虫一疋だ。兵隊屋敷の洗流あらいながしにもしろさ。はばかりながら御亭主は鉄道馬車の馬糞まぐそさらいやす、きつ掙人かせぎにんさね。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いかに、とるにらないあぶれ者とはいえ、一ねんに自分の信仰しんこうする地蔵菩薩じぞうぼさつのおすがたを、馬糞まぐそだらけな土足にかけられては、もうかんべんすることができない!
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たまには場末の色町らしい処で笠の中を覗き込んで馬糞まぐそ女郎や安芸妓げいしゃたちにムゴがられて、思わず収入みいりに有付いたり、そんな女どもの取なしで田舎大尽いなかだいじんに酒肴を御馳走され
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
道路にのこしすてられた草鞋わらじ、馬の藁沓わらぐつ、それから馬糞まぐそたぐいなぞをかき集めるものがある。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
東坡巾の先生は囅然てんぜんとして笑出して、君そんなに感服ばかりしていると、今に馬糞まぐそ道傍みちばた盛上もりあがっているのまで春の景色けいしょくだなぞとめさせられるよ、とたわむれたので一同みんな哄然どっ笑声しょうせいげた。
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
こう云う御坊っちゃんに、洗いざらい自分の弱点を打ち明けては、いたずらに馬糞まぐそを投げて、御嬢さまを驚ろかせると同結果に陥いりやすい。余計な事をして愛想を尽かされるよりは黙っている方が安全だ。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
道のべの馬糞まぐそひろひもあかあかと照らし出されつ秋風吹けば
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
中を開けてみると、粉煙草が少々、薩摩や国府でもあることか、これは刻みの荒い、色の黒い、少し馬糞まぐそ臭い地煙草ではありませんか。
銭形平次捕物控:050 碁敵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
家々のどこもかしこもかがりで赤く染められ、馬糞まぐそくさい町中を、暢気のんきうたってあるく武者がいるかと思えば、女たちの酌にどよめいて、手拍子てびょうしや鉢など叩きながら
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かう云ふ御坊つちやんに、あらざらひ自分の弱点をけては、いたづらに馬糞まぐそげて、御嬢さまを驚ろかせると同結果に陥いり易い。余計な事をして愛想あいそかされるよりはだまつてゐる方が安全だ。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
門庭に馬糞まぐそ火氣ほけ立ち日は寒しすべなあはれとわれは掃きをり
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
荒つぽいことを言ひながらも、平次はとぐろをほぐしさうもなく、自棄やけに煙草盆を引寄せて、馬糞まぐそ臭いのを二三服立てつゞけにくゆらします。
夕がたの兵糧ひょうろうかしぎに、城外の陣場は、どこも煙っていた。馬糞まぐそや汗のにおいに、人馬ともごった返している中を、かの女は、おそれげもなく、物見組と一しょに通った。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
門庭に馬糞まぐそ火気ほけ立ち日は寒しすべなあはれとわれは掃きをり
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そこらに乾いている馬糞まぐそから陽炎かげろうが燃えている。そして、緋桃ひももの花が太陽からこぼれて来た。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平次は馬糞まぐそ線香をあげて、丁寧に拜むと、膝行ゐざり寄つて市之助の死骸を調べました。
木檞もつこくは冬によろしき門庭を馬糞まぐそ火氣ほけ立ち騎馬は足踏む
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
「猫又法印に當りました。主人の殺された部屋の眞つ下に陣取り、下手人を斬り殺すんだと言つて、馬糞まぐそ臭い抹香まつかうを一升五合ばかりも焚き、獨鈷どつこを横喰へに、揉みに揉んでの荒行ですよ」
「江戸のほこりは、馬糞まぐそくそうてたまらん。安房あわの海辺へでもゆこうか」
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
木槲もつこくは冬によろしき門庭を馬糞まぐそ火気ほけ立ち騎馬は足踏む
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
つまみ上げててのひらで碎いて見ると、江戸の往來の馬糞まぐそと砂利をねり堅めたやうな土とは全く違つたもので、うんと空氣を含んだ眞つ黒な土くれですが、肥料のの少しもないところを見ると
「この馬糞まぐそめ! おれを誘拐かどわかしだと?」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つまみ上げててのひらで砕いてみると、江戸の往来の馬糞まぐそと砂利をねり堅めたような土とは全く違ったもので、うんと空気を含んだ真っ黒な土くれですが、肥料のの少しもないところをみると
馬糞まぐそ、ご上洛じょうらく
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「八五郎の煙草入に煙草が入つて居るのが妙ぢやないか。その煙草が馬糞まぐそ臭い鬼殺しでもあることか、プーンと名香の匂ひのする上葉だ。水戸か薩摩さつまか知らないが、何處でくすねて來やがつたんだ」
「良いかおりだろう、線香の匂いにも似ているが、馬糞まぐそ線香じゃない」