ひら)” の例文
銀座の大通おほどうりに空家あきやを見るは、帝都ていと体面たいめんに関すと被説候人有之候とかれそろひとこれありそろへども、これは今更いまさらの事にそろはず、東京とうけふひらけて銀座の大通おほどほりのごと
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
と、歯をくいしばり、腕をし、また、慷慨こうがいの気を新たにして、式終るや、万歳の声しばし止まず、ために、天雲もひらけるばかりであった。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すなわち真の無階級の世界がひらかれるためには、私生児の数および実質が支配階級という親を倒すに必要なだけを限度としなければならない。
片信 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
汝の命ずるところよくわが心に適ひ、既にこれに從へりとなすともなほしかするの遲きを覺ゆ、汝さらに願ひを我にひらくをもちゐず 七九—八一
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
兼ねてその機関からくりを作りたるもの故すなわち栓ありてひらけず、ついに人に捕えらると、ここを以て智不智を撰ぶとぞ。いわゆる猴智慧なるかなと見ゆ。
そもそも歌の腐敗は『古今集』に始まり足利時代に至ってその極点に達したるを、真淵まぶちら一派古学をひらき『万葉』を解きようやく一縷いちるの生命をつなぎ得たり。
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
なお奮闘ふんとうの勇を食い得るのは、強烈な嗜好が、他より何物にも犯されない心苑しんえんひらいて、いささかながら自己の天地がそこにあるからであるとみておいてもらいたい。
去年 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
此間に生きて、我々の文化生活の第一歩をひらいてくれた祖先の全体、其を主に、感情の側から視ようとするのである。だから、其方の記録即、万葉集の名を被せた次第である。
万葉びとの生活 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
天地あめつちひらけしはじめ、成り成れる不尽ふじ高嶺たかねは、白妙のくすしき高嶺、駿河甲斐二国ふたくにかけて、八面やおもてに裾張りひろげ、裾広に根ざし固めて、常久に雪かつぐ峰、かくそそり聳やきぬれば
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
番匠の道ひらかれし手置帆負ておきほおひみこと彦狭知ひこさちの命より思兼おもひかねの命天児屋根あまつこやねの命太玉の命、木の神といふ句〻廼馳くゝのちの神まで七神祭りて、其次の清鉋の礼も首尾よく済み、東方提頭頼吒持國天王とうばうたいとらだぢごくてんわう
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
沢ニ沿ヒ沮洳しょじょノ間ヲ往クコト数里ニシテ鹿島台かしまだいニ飯ス。三本木川ヲ渡ル。田野ひらケ黄雲天ニ連レリ。ソノ風害ヲ被ルコト白川前後ノ甚シキガ如クニ至ラズ。我心すこぶる降ル。晡後ほご県ニ入ル。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
少女をとめは漁家の子を引きて、緑深き葡萄園に往き、又近きわたりの山に分け入るに、まだ見ぬ景色いと多く、殊に山腹の自らひらけて、その中にめでたき壁畫と數多き贄卓にへづくゑとある寺院の見えたるなど
されどかのまことの父はわが臆してひらかざる願ひをさとり、自ら語りつゝ、我をはげましてかたらしむ 七—九
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
その時、楽部がくぶ伶人れいじんたちは、一斉に音楽を奏し、天には雲をひらき、地には漳河しょうがの水も答えるかと思われた。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
古来神殿に宿して霊夢を感ぜしといい、神社に参拝して迷妄をひらきしというは、あたかも古欧州の神社神林に詣でて、哲士も愚夫もその感化を受くること大なるを言えるに同じ。
神社合祀に関する意見 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)
真の象徴発想をひらいたであらうに、黒人から赤人に、赤人から家持につたはつた調子の「細み」と、かそかでそして和らぎを覚える「趣き」は、彼にも完成せられず、壬生忠岑になつて
番匠の道ひらかれし手置帆負ておきほおいみこと彦狭知ひこさちみことより思兼おもいかねみこと天児屋根あまつこやねみこと太玉ふとだまみこと、木の神という句々廼馳くくのちかみまで七神祭りて、その次の清鉋きよがんなの礼も首尾よく済み、東方提頭頼吒持国天王とうほうたいとらだじごくてんおう
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
天地あめつちひらけしはじめ、成り成れる不尽の高嶺たかねは白妙の奇しき高嶺、駿河甲斐二国ふたくにかけて八面やおもてに裾張りひろげ、裾広に根ざし固めて、常久に雪かつぐ峰、かくそそり聳やきぬれば、いかしくもたゞしきかたち
一世の紛乱の暗黒をひらき、万代にわたる泰平の基をたつるは、天に選ばれた人のみがよく為しとげることで、志さえ立てれば誰でも為し能うものではありません。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
方孝孺は如何いかなる人ぞや。孝孺あざな希直きちょく、一字は希古きこ寧海ねいかいの人。父克勤こくきん済寧せいねい知府ちふたり。治を為すに徳をもととし、心をくるしめて民のためにす。田野でんやひらき、学校を興し、勤倹身を持し、敦厚とんこう人を待つ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
天地あめつちひらけしはじめ、成りませる神々
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
妖術とは、外道げどう魔物のするわざだ。天地ひらけて以来、まだかつて方術者が天下を取ったためしはあるまい。じる心、おそれるまなこ、わななく魂を惑わす術を、妖術とはいうのだ。怖れるな、惑うな。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)