つつ)” の例文
時雨しぐれの通りこせし後は林のうちしばし明るくなりしが間もなくまた元の夕闇ゆうやみほの暗きありさまとなり、遠方おちかたにてつつの音かすかに聞こえぬ。
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ドカアンと弾音はたかくッぽへ走った。つつは美少年の手にくられているのだった。船客たちは、耳を抑えてつ伏した。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
屋根は、ワラでふいてあって、入り口には、木の兵隊さんがふたり、立っていました。そして、舟に乗ってとおる人に、捧げつつをしていました。
遊一 俺だとて、二、三日前からこのつつの奴等を、もうこれで五度くらいずつも掃除をしたて。大概いやにもなろうわえ!
天狗外伝 斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
「あッ、ありゃあたしかにつつおとだ! はばかりもなく夜中の鉄砲! こいつは大変だ! こうしちゃあいられぬ!」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
中隊長は、不満げに、彼をにらんだ。「も一度。そんなささつつがあるか!」その眼は、そう云っているようだった。
渦巻ける烏の群 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
そしてコゼットに腕を貸してテュイルリー宮殿の門の前を通ったら、兵士らは自分にささつつをしてくれるだろう。
彼は朝から一発も放さないでじりじりしている時であったから、かたきにでも出会ったようにいきなりつつの口火へ火縄をさした。と、何かに弾のあたった音がした。
猫の踊 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
東京では蜜柑の皮でさえ薬種屋やくしゅやへ買いに行かねばならぬのにと思った。夜になると、しきりにつつの音がする。何だと聞いたら、猟師りょうしかもをとるんだと教えてくれた。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
不敵の男なればただちつつを差し向けて打ち放せしにたまに応じて倒れたり。そこにけつけて見れば、身のたけ高き女にて、解きたる黒髪はまたそのたけよりも長かりき。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
つつを棒げて敬礼する衛兵の姿に眼もれず二人の紳士はズンズンと宮殿の奥へ這入って行った。
闘牛 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
軍事教練の査閲のときに、校長先生に敬禮! といふ號令がかかつて、私たちはささつつをして、みると、校長は、秋の日ざしを眞正面に受けて、滿面これ含羞の有樣で、甚だ落ちつきがなかつた。
校長三代 (旧字旧仮名) / 太宰治(著)
その両国橋へさしかかったとき、察しの通り、やはり刺客しかくが伏せてあったのです。橋袂はしたもとのお制札場の横から、ちらりと黒い影が動いたかとみるまに、つつさきらしい短い棒がじりッとのぞきました。
つつ向けてがうに押しむ鉄兜眼には堪ふるか待つある時を
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
遊一 俺だとて、二三日前からこのつつの奴等を、もうこれで五度位ずつも掃除をしたて。たいがいいやにもなろうわえ!
斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
夜が明けるまでこの家で休息することにして、一同はそのつつをおろすなど、かれこれくつろいで東のしらむのを待った。
鹿狩り (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
あれは俺が松の枝にくくしつけておいた白鉢巻の小布だ。つつの標的をあの下にねらいさだめておけ。そして敵の影がそこを曲って来たら、途端に浴びせかけるのだ
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
狙った的ははずさないのさ! 御府内のつつばらいは、御禁制だが、ここは川向う、しかも小梅のはずれ、おとがめもあるまいから、どれ、ひとつ、久しぶりで
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「りっぱなお気性きしょうですわ。」と王女はいいました。その晩、町じゅうあかりがついて、ドーン、ドーン、とお祝の大砲がなりひびきました。それから兵隊はささつつしました。
顔の色きはめて白し。不敵の男なれば直につつを差し向けて打ち放せしに弾に応じて倒れたり。そこにけ付けて見れば、身のたけ高き女にて、解きたる黒髪はまたそのたけよりも長かりき。
遠野物語 (新字旧仮名) / 柳田国男(著)
営門でささつつをした歩哨ほしょうは何か怒声をあびせかけられた。
渦巻ける烏の群 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
立雲よ野外教練の子ら行くとつつはかつぎて足亂れ踏む
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
やはり短いつつです。
かれこれするうちに昼時分になったが鹿らしいものも来ない、たちまち谷を一つ越えたすぐむこうの山の尾でつつの音がしたと思うと白いけむが見えた。
鹿狩り (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
斉昭公お木像の揚輿を真中にひっぱさんでさ、つつ、槍、長刀、馬轎、長棹ギッシリ取詰めてエイエイ声を押出して行った時ぁ俺も行きたくってウズウズしたあ。
天狗外伝 斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
と、いっても、弾込たまごめや、つつの掃除に、暇がかかるので、鉄砲組もおよそ、三列三交代ぐらいになって、撃っては、うしろへ退き、次の列に、装填そうてんして待っているのが代って前へ進んでは撃つ。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
立雲よ野外教練の子ら行くとつつはかつぎて足乱れ踏む
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
つつっぱらいじゃあ、ひけを取らねえ男だった——
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
斉昭公お木像の揚輿を真中にひっぱさんでさ、つつ、槍、長刀、馬轎、長棹ギッシリ取詰めてエイエイ声で押出して行った時あ、俺も行きたくってウズウズしたあ。
斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
今日きょうは雲のゆきき早く空と地と一つになりしようにて森も林もおぼろにかすみ秋霧重く立ちこむる野面のづらに立つ案山子かがしの姿もあわれにいずこともなく響くつつの音沈みて聞こゆ。
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
三軒家や四貫島しかんじまや、天保山てんぽうざんのあたりは、見物がたいへんだった。よしだか人間だかわからないほど両岸に市民が立っている。艦上には、三藩の兵が、ささつつをして、五卿は烏帽子えぼし直垂ひたたれで立っていた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
せめて今、つつむと
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
僕の胸はワクワクして来た、なぜ叔父さんを起こさなかったかと悔やんだがもうおそい。十二の少年こどもつつって小馬ほどの鹿に差し向けたさまはどんなにおかしかっただろうか。
鹿狩り (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
せめて今、つつむと
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)