酒肴しゆかう)” の例文
一夕いつせき、松川の誕辰たんしんなりとて奥座敷に予を招き、杯盤はいばんを排し酒肴しゆかうすゝむ、献酬けんしう数回すくわい予は酒といふ大胆者だいたんものに、幾分の力を得て積日せきじつの屈託やゝ散じぬ。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
相して貧きに失ふアヽあやまちぬとくゆるにつけても昨夜の泊り醉狂に乘じて太華氏露伴子に引別れたる事のおもなさよ今日は先に中津川に待ち酒肴しゆかう
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
ころは夏なりしゆゑ客舎やどりしいへにはかげにむしろをしきて納涼すゞみ居しに、主人あるじは酒をこのむ人にて酒肴しゆかうをこゝに開き、は酒をばすかざるゆゑ茶をのみて居たりしに
もよほ講中かうちうの内にて紺屋こんや五郎兵衞蒔繪師まきゑし三右衞門米屋六兵衞呉服屋ごふくや又兵衞の四にんを跡へ止め別段べつだん酒肴しゆかう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
玄竹げんちく病家廻びやうかまはりのせはしい時間じかんいて、れるまで、但馬守たじまのかみ相手あひてをしてゐた。酒肴しゆかうて、さけ不調法ぶてうほふ玄竹げんちくも、無理むりから相手あひてをさせられたさかづきふたつばかりに、ほんのりとかほめてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
收めたれば酒肴しゆかう見立掛り膳部申付役となる火のさかんなる圍爐裏ゐろりに足踏伸し鉛筆のしりにて寶丹ほうたんと烟草の吹壳ふきがら
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
つい挨拶あいさつをぞなしたり其夜吉兵衞には酒肴しゆかう取寄とりよ船頭せんどうはじめ水主かこ十八人を饗應もてな酒宴しゆえんもよほしける明れば極月ごくづき廿九日此日は早天より晴渡はれわたり其上追手おつての風なれば船頭杢右衞門は水主共かこども出帆しゆつぱん用意ようい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たゞ他所たしよの者は渋海川しぶみがは氷見こほりみとて、花見のやうに酒肴しゆかうをたづさへきし彩筵はなござ毛氈まうせんなどしきてこれを見る。大小いく万の氷片こほりのわれ水晶すゐしよう盤石ばんじやくのごときが、あゐのやうなる浪にたゞよひながるゝは目ざましき荘観みものなり。
親子はこれにはげまされて心慰こゝろひらけ酒肴しゆかうをいだして人々にすゝむ。