つひ)” の例文
「強情で、しみつ垂れで、女は大飯を食つたり着物を買つたり、つひえだからつてお内儀さんも持たない人ですもの」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
あなたは前後八ヶ月の日子につしつひやして思ひ立つた翻譯を成就じやうじゆしたとつてむしその長きに驚ろかれるやうだが、私はかへつてその迅速じんそくなのに感服したいのです。
『伝説の時代』序 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
うへなき滿足まんぞくもつ書見しよけんふけるのである、かれ月給げつきふ受取うけとると半分はんぶん書物しよもつふのにつひやす、の六りてゐるへやの三つには、書物しよもつ古雜誌ふるざつしとでほとんどうづまつてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
満更その自分の一生に就いて思慮をつひやさぬ事も無いので、時にはいろ/\その将来の事を苦にして、自分の家の没落をも何うかして恢復くわいふくしたいと思つた事もあつたらしい。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
……(皆々に對ひ)おい、どうした? こりゃひる炬火たいまつぢゃわ。(むだなつひえぢゃ。)
われ答をちて躊躇ちうちよせり、而して答遂に来らず。朽ちざるに近きものいづくにかある。死せざるに近きものいづくにかある。われこの答へを聞かんが為に過去の半生を逍遙黙思につひやせり。
富嶽の詩神を思ふ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
それでも勘次かんじ從來これまでよりも餘計よけいつひやさねばならぬ穀物こくもついてかれ淺猿さもしいこゝろ到底たうていさわがされねばならなかつた。勘次かんじ卯平うへいときにはそれとはなくひとりぶつ/\とつぶやくことがあつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いなその二三にしろすゝんで實行じつかうにかゝると、かへつてそのためつひやす時間じかんはうをしくなつてて、ついまた引込ひつこめて、じつとしてゐるうちに日曜にちえう何時いつれて仕舞しまふのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)