見分けんぶん)” の例文
ちょうど半蔵が寿平次と二人で会所の前にいると、そこへ隣家の伊之助も隠居金兵衛きんべえと一緒に山林の見分けんぶんからぽつぽつ戻って来た。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
見たところ、御料林を見分けんぶんに来た県庁のお役人か、悪くいえば地方行商の薬売りか、まずそんなところであろうと重兵衛はひそかに値踏みをした。
木曽の旅人 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「おじさん、ひとりで行って、調べてみてごらんなさい、そうすれば、わたしたち、あとから揃って見分けんぶんに行くわ」
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
もっとも十年ほど前に予が房総を旅行した時に見分けんぶんした所でも上総をあるく間は少しもげんげんを見た事がなかったので、この辺には全くないのかと思うたら
病牀苦語 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
その日のとり下刻げこくに、上邸かみやしきから見分けんぶんに来た。徒目附、小人こびと目附等に、手附てつけが附いて来たのである。見分の役人は三右衛門の女房、伜宇平、娘りよの口書くちがきを取った。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
これでまず家じゅうの見分けんぶんを終わって、わたしはしばらく火に暖まりながらシガーをくゆらした。
もはや電燈がいて白昼まひるのごとくこの一群の人を照らしている。人々は黙して正作のするところを見ている。器械に狂いの生じたのを正作が見分けんぶんし、修繕しているのらしい。
非凡なる凡人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
見分けんぶんするにしのびざる所なり故に此半四郎も己正直なる心より番頭久兵衞がよこしまなるを聞て立腹りつぷくし殊に又今酒をのんだる一ぱい機嫌きげんゆゑ猶々なほ/\いきどほりはげしくたゞちに油屋の見世へ踏込ふみこんで番頭久兵衞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さかさまに落すが如し衣袂いべい皆なうるほひてそゞろさぶきを覺ゆれば見分けんぶん確かに相濟んだと車夫の手を拂ひて車に乘ればまたガタ/\とすさまじき崖道がけみちを押し上り押しくだし夜の十時過ぎ須原すはら宿やどりへ着き車夫を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
見分けんぶんの家につんばり棒をおっかって
農奴の要求 (新字新仮名) / 今野大力(著)
尾張藩の勘定奉行かんじょうぶぎょう、普請役御目付おめつけ錦織にしこうりの奉行、いずれも江戸城本丸の建築用材を見分けんぶんのためとあって、この森林地帯へ入り込んで来る。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この老人は富士浅間せんげん流という一派を開いた人で、試合の見分けんぶんには熟練家の誉れを得ている人でありました。
次に死骸の見分けんぶんをした。酒井家に奉公した時の亀蔵の名を以て調書に載せられた創はこうである。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
取出してふできよらかにしたゝめられしは「なんぢ父にうとまれしに非らず母にうとまれしにあらず父母すてるに非ず自分の薄命はくめいなり元祿二年九月貧暦ひんれき」と書付て其まゝ行過ゆきすぎける兎角とかくする内に村方の役人其外大勢の人あつまりて地頭ぢとう代官所へ訴へ出ければ役人方見分けんぶんの上捨子の儀は村方へ養育申付られ小兒は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
荷物はそれぞれ問屋預けということになったが、人馬継立ての見分けんぶんとして奉行ぶぎょうまで出張して来るほど街道はごたごたした。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「相手を出すに及び申さぬ、この一心斎が見分けんぶんに不服があらば申してみられい」
達したり然る上は如何樣にもところ作法さはふ通りに行はれよと少もわるびれず答ければ村役人共然らばしばらひかへ給へとて當所の名主又品川宿の役人共も立合たちあひ一同評議ひやうぎの上當所の御代官だいくわんへ訴へければ早速さつそく役人中出張しゆつちやうあり敵討かたきうちてい見分けんぶんあり先友次郎等三人は御沙汰ごさた有迄あるまで名主方にひかへ居べしとて番人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あの土屋総蔵なぞは赴任して来ると、すぐ六人の官吏を連れて開墾その他の見分けんぶんにやって来たからね。あの時の見分は、贄川にえがわから妻籠、馬籠まで。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
井上ノ先伝兵衛先生ノ年忘レニモ頼ミデ諸勝負ノ見分けんぶんハオレガシタ、男谷おたにノ稽古場開キニモオレガ取締行司ダ、ソノ時分ハ万事流儀ノモメ合イ、弟子口論伝受ノ時ノ言渡シ、多分オレバカリシタガ
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「新茶屋の境から峠の峰まで道普請みちぶしんよなし。尾州からはもう宿割しゅくわりの役人まで見えていますぞ。道造りの見分けんぶん、見分で、みんないそがしい思いをしましたに。」
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)