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西岸
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せいがん
西風は
川に
吹き
落ちる
時西岸の
篠をざわ/\と
撼がす。
更に
東岸の
土手を
傳うて
吹き
上げる
時、
土手の
短い
枯芝の
葉を
一葉づゝ
烈しく
靡けた。
思ふに
此潮流はラツカデヴ
群島の
方面から、
印度大陸の
西岸を
※ぎて、マダカツスル
諸島の
附近より、
亞弗利加の
南岸に
向つて
流れて
行くものに
相違ない、すると
其間には
滊船に
見出されるとか
鬼怒川の
西岸一
部の
地にも
恁うして
春は
來り
且推移した。
憂ひあるものも
無いものも
等しく
耒耟を
執つて
各其の
處に
就いた。
勘次も
其の
一人である。
鬼怒川の
水は
落ちて
此方の
土手から
連つて
居る
大きな
洲が
其の
流れを
西岸の
篠の
下まで
蹙めて
居る。
廣く
且遠い
洲には
只西風が
僅に
乾いた
砂をさら/\と
掃くやうにして
吹いて
居る。