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裹
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つゝ
ふりがな文庫
“
裹
(
つゝ
)” の例文
一群の老若男女ありて
奔
(
はし
)
り逃れんとす。左に嬰兒を抱き、右に
裹
(
つゝ
)
みを
挾
(
わきばさ
)
める村婦の、且泣き且走るあり。われは
財嚢
(
ざいのう
)
を傾けてこれに贈りぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
今度
(
こんど
)
は石を
錦
(
にしき
)
に
裹
(
つゝ
)
んで
藏
(
くら
)
に
納
(
をさ
)
め
容易
(
ようい
)
には
外
(
そと
)
に出さず、時々出して
賞
(
め
)
で
樂
(
たのし
)
む時は先づ
香
(
かう
)
を
燒
(
たい
)
て
室
(
しつ
)
を
清
(
きよ
)
める
程
(
ほど
)
にして居た。
石清虚
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
マルテはヴァル・ヂ・マーグラより亂るゝ雲に
裹
(
つゝ
)
まれし一の火氣をひきいだし、嵐劇しくすさまじく 一四五—一四七
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
その辺は一体に勤人の住宅が多かつたので、何処の家でも
裹
(
つゝ
)
ましげな
和楽
(
わらく
)
の声がしてゐるやうに思へた。ピアノの音なども何となく彼女の胸を唆つた。
復讐
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
いまや夜が、それを平和な
睡眠
(
ねむり
)
のなかへ
裹
(
つゝ
)
まうとするとき、そのどれもが、
円
(
つぶ
)
ら
瞳
(
め
)
に肖た灯を点けたまんま…
雪
(新字旧仮名)
/
高祖保
(著)
▼ もっと見る
猫は蘭軒歿後にも榛軒に
畜
(
か
)
はれてゐて、十三年の後に死んだ。榛軒の妻は蘭軒の旧門人塩田楊庵に猫を葬ることを託して、金二朱を
裹
(
つゝ
)
んで寺に布施せしめた。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
わたくしは神々しいへりくだつた
御
(
おん
)
足の為に、わたくしの
敬
(
うやま
)
ひの心で美しい繻子の
御
(
おん
)
靴を造りまする、善い鋳型が
形
(
かた
)
を守る如く、しつくりと
御
(
おん
)
足を抱き
裹
(
つゝ
)
みまするやう。
或るまどんなに:西班牙風の奉納物
(新字旧仮名)
/
シャルル・ピエール・ボードレール
(著)
胸に燃ゆる情の
焔
(
ほのほ
)
は、他を燒かざれば其身を
焚
(
や
)
かん、まゝならぬ
戀路
(
こひぢ
)
に世を
喞
(
かこ
)
ちて、秋ならぬ風に散りゆく露の
命葉
(
いのちば
)
、或は
墨染
(
すみぞめ
)
の
衣
(
ころも
)
に
有漏
(
うろ
)
の身を
裹
(
つゝ
)
む、さては
淵川
(
ふちかは
)
に身を棄つる
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
あたしの
申上
(
まをしあ
)
げる
事
(
こと
)
を
合点
(
がてん
)
なさりたくば、まづ、ひとつかういふ
事
(
こと
)
を
御承知
(
ごしようち
)
願
(
ねが
)
ひたい。
白
(
しろ
)
の
頭巾
(
づきん
)
に
頭
(
あたま
)
を
裹
(
つゝ
)
んで、
堅
(
かた
)
い
木札
(
きふだ
)
をかた、かた、いはせる
奴
(
やつ
)
めで
御座
(
ござ
)
るぞ。
顔
(
かほ
)
は
今
(
いま
)
どんなだか
知
(
し
)
らぬ。
癩病やみの話
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
折から灯籠の中の
灯
(
ひ
)
の、香油は今や尽きに尽きて、やがて
熄
(
き
)
ゆべき一
ト
明り、ぱつと光を発すれば、朧気ながら互に見る
雑彩
(
いろ
)
無き
仏衣
(
ぶつえ
)
に
裹
(
つゝ
)
まれて
蕭然
(
せうぜん
)
として坐せる姿、修行に
窶
(
やつ
)
れ老いたる面ざし
二日物語
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
いよ/\心もとなくて媼の授けし
裹
(
つゝ
)
み引き出すに、種々の
書
(
かき
)
ものありと覺ゆれど、夜暗うして一字だに見え分かず。兎角して曉がたになりぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
名をオッタケッルロといへり、その
襁褓
(
むつき
)
に
裹
(
つゝ
)
まれし頃も、淫樂安逸をむさぼるその子ヴェンチェスラーオの鬚ある頃より遙に善かりき 一〇〇—一〇二
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
かゝる文壇の
慈氏
(
みろく
)
、詞場のメシヤスは果していつか出現すべき。獨逸にレツシングといふものありき。彼は筆戰の間に名を成して、
屍
(
かばね
)
を馬革に
裹
(
つゝ
)
まむの志を
曠
(
むなし
)
うせざりき。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
濡れし袂に
裹
(
つゝ
)
みかねたる恨みのかず/\は、そも何處までも浮世ぞや。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
アマルフイイの市は
裹
(
つゝ
)
める
貨物
(
しろもの
)
をみだりに堆積したる
状
(
さま
)
をなせり。羅馬なる
猶太街
(
ゲツトオ
)
の狹きも、これに比べては尚
通衢
(
つうく
)
大路
(
おほぢ
)
と稱するに足るならん。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
福山藩士に
稲生
(
いなふ
)
某と云ふものがあつた。其妻が難産をして榛軒が
邀
(
むか
)
へられた。榛軒は忽ち
遽
(
あわた
)
だしく家に還つて、妻志保に「
柏
(
かえ
)
の著換を皆出せ」と命じ、これを
大袱
(
おほぶろしき
)
に
裹
(
つゝ
)
んで随ひ来つた僕にわたした。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
裹
漢検1級
部首:⾐
14画
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一裹
卷裹
山裹
巻裹
羽裹
袱裹
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