衝突ぶつか)” の例文
けれども其の笑顔すら時々寒風に衝突ぶつかって哀れにひしゃげた相好そうごうに変った。こうなると我々は素晴らしい警句が口をついて出る。
The Affair of Two Watches (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
入口のドアに走り寄って、鉄かと思われるほど岩乗がんじょうな、青塗の板の平面に、全力を挙げて衝突ぶつかってみた。暗い鍵穴を覗いてみた。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「これだけの事件の衝突ぶつかり合いだ。もう少しこのおれを刺戟して、創造的境地へ引き上げてくれても、よかりそうなものだと思うのだがな」
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
……それがあの洪水みずの時に流れ出して、大丈夫だった広岡のうち衝突ぶつかったので流れただろう、誰のおかげだ……
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、もとより、へえ、そうですか、と引っ返すわけにはゆかない。強く脚をあおって前に廻った三次、背中へ衝突ぶつかって来るところを浅く水を潜って背後うしろへ抜けた。
とある露路の角に差かかった時、突然、ただならぬ女の叫声をきいたので、驚いて足を駐めると、不意に真暗な露路から飛出してきた女と危く衝突ぶつかりそうになった。
日蔭の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)
吾家うちおっかさんが与惣次よそうじさんところへばれて行った帰路かえりのところへちょうどおまえが衝突ぶつかったので、すぐに見つけられて止められたのだが、後で母様おっかさんのお話にあ
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
『もとへ!』とらいのやうなこゑ女王樣ぢよわうさまさけばれました。人々ひと/″\たがひ衝突ぶつかりまはりながら、四方八方しはうはつぱうけめぐりました。しばらくしてみんなが各々おの/\もと位置ゐちにつくや、競技ゲームはじまりました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
すると、ちょうどその時、女の人が一人、裸のまんま、わたしと衝突ぶつかったんです。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
此の間、何うかすると、ゴト/\、ゴト/\と、輕い、併しながら不愉快ふゆくわいな響が耳に入ツて、惡く神經を小突く。氣が付いて見ると、其は風が中窓ちゆうまどや風拔の戸に衝突ぶつかツてるのであツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「余程たちの悪い婦女おんなにでも衝突ぶつかったものでしょうかナア」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
とたんに左右から二つの岩が轟然と憤怒いかりの叫びを上げ、動物いきもののように衝突ぶつかって来たが、わずかに舟尾ともに触れたばかりで舟も人も無事であった。
そして彼處あすこを行く廂髮の頭と角帽の頭顱とへ一時に衝突ぶつかつて、慥に五點は屹度取れる、などと考へる。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
日向一学と妙見勝三郎が、憎さに喬之助を凝視みつめながら、一しょにいい出して言葉が衝突ぶつかった。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
七點セヴンれの刷毛はけし、『さア、なんでもわることは——』はからずも其視線そのしせんが、つてみんなのることをてゐたあいちやんの視線しせん衝突ぶつかつたので、いそいでかれはそれをらしました
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
かいに力をこめ、岩と岩とが衝突ぶつかり合い、やがて離れた一髪の間にスーッとばかりに突っ切った。
言葉が衝突ぶつかって、双方、愕いて声を呑んだ。
この人工的の断崖の下の、深い深い海上で浮き岩が衝突ぶつかり合っているのであった。
「ううむ、どうも仕方がない。思い切って彼奴きゃつらと衝突ぶつかるかな」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
斯う云い乍ら、大きな建物へ、彼はドシリと衝突ぶつかった。
人間製造 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こう云うとドンと衝突ぶつかった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)