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藪蔭
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やぶかげ
ふりがな文庫
“
藪蔭
(
やぶかげ
)” の例文
湯の谷もここは山の方へ
尽
(
はずれ
)
の家で、奥庭が深いから、
傍
(
はた
)
の騒しいのにもかかわらず、
森
(
しん
)
とした
藪蔭
(
やぶかげ
)
に、細い、青い光物が見えたので。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
甲斐は
藪蔭
(
やぶかげ
)
を選んで、斜面のほうを頭にし、寝袋の中にすっぽりと躯を入れ、食糧の包みを枕にして、じっと眼をつむっていた。
樅ノ木は残った:02 第二部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「
姉
(
ねえ
)
さん待ちな」と
突然
(
いきなり
)
武士
(
さむらい
)
が
後
(
うしろ
)
から
襟上
(
えりがみ
)
を
掴
(
つか
)
むから「あれー」と云う
中
(
うち
)
に足首を取って無理に
藪蔭
(
やぶかげ
)
へ
担
(
かつ
)
ぎ込み「ひッひッ」というを
引
(
ひっ
)
□し
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
藪蔭
(
やぶかげ
)
から出て来た金蔵は、
糸楯
(
いとだて
)
を背に負って、小さな箱をすじかいに肩へかけて、旅商人
体
(
てい
)
に作っていました。
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
昼は
肴屋
(
さかなや
)
の
店頭
(
みせさき
)
に
魚骨
(
ぎょこつ
)
を求めて、
情
(
なさけ
)
知らぬ人の
杖
(
しもと
)
に
追立
(
おいたて
)
られ。或時は
村童
(
さとのこら
)
に
曳
(
ひ
)
かれて、
大路
(
おおじ
)
に
他
(
あだ
)
し犬と争ひ、或時は
撲犬師
(
いぬころし
)
に襲はれて、
藪蔭
(
やぶかげ
)
に危き命を
拾
(
ひら
)
ふ。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
▼ もっと見る
白睨
(
にら
)
み付
覺
(
おぼ
)
え無しとは
白々
(
しら/″\
)
しき
詐
(
いつは
)
りなり去月廿七日小篠堤權現堂の
藪蔭
(
やぶかげ
)
に於て穀屋平兵衞を
切殺
(
きりころ
)
し金百兩を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
少し陰気な感じですが、素晴らしい美人で、何となく
藪蔭
(
やぶかげ
)
に咲き誇っている月見草を思わせる娘でした。
銭形平次捕物控:020 朱塗の筐
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
実際私達にしろこの坂に達した時分になると
余程
(
よほど
)
自分ではしっかりしているつもりでも神経が
苛々
(
いらいら
)
として来て、
藪蔭
(
やぶかげ
)
で小鳥が羽ばたいても思わず慄然として首を縮め
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
欣之介のゐる
離家
(
はなれ
)
の横手にある
灰汁柴
(
あくしば
)
の枝々の
先端
(
さき
)
へ小さな粒々の白い花が咲き出した頃の或る日暮方、
革紐
(
かはひも
)
で堅く
結
(
ゆは
)
へた白いズックの
鞄
(
かばん
)
が一つ、その灰汁柴の
藪蔭
(
やぶかげ
)
に置いてあつた。
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
「ええもう、ほんとに
鶯
(
うぐいす
)
の巣のような、
藪蔭
(
やぶかげ
)
の草庵でござりまする。それでも」
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
懐中電燈の光を
便
(
たよ
)
りに、真黒い
藪蔭
(
やぶかげ
)
の路を通って、
田圃
(
たんぼ
)
に下りた。夜目にも白い田の水。
蛙
(
かわず
)
の声が雨の様だ。不図東の
空
(
そら
)
を見ると、大火事の様に空が焼けて居る。空に
映
(
うつ
)
る東京の
火光
(
あかり
)
である。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
一人はステッキを持ち
草履
(
ぞうり
)
を
穿
(
は
)
き、一人は
日和下駄
(
ひよりげた
)
を穿いて、
藪蔭
(
やぶかげ
)
を通り墓地を抜けて、小松の繁っている後の山へ登った。息休めもしないで一気に登ったので、二人の額からは汗がぼたぼた落ちた。
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
藪蔭
(
やぶかげ
)
に小さい家があつて、そこから笛の音は流れ出してゐた。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
小高みになった
藪蔭
(
やぶかげ
)
のところに
竹樋
(
たけとい
)
を通した清水を
掬
(
すく
)
いながら、
握飯
(
おむすび
)
を郁太郎にも食べさせ、自分も食べていると、不意に後ろから人の足音があって、ガサガサッと藪の
下萌
(
したもえ
)
が鳴る。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
十九と聞きましたが、
境遇
(
きやうぐう
)
のせゐか、年よりはふけて、二十二三と言つても通るでせう。少し陰氣な感じですが、素晴しい美人で、何となく
藪蔭
(
やぶかげ
)
に咲き
誇
(
ほこ
)
つて居る
月見草
(
つきみさう
)
を思はせる娘でした。
銭形平次捕物控:020 朱塗りの筐
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
藪蔭
(
やぶかげ
)
の
陽
(
ひ
)
はもう暖かな
草萌
(
くさも
)
えのにおいに
蒸
(
む
)
れていた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
竹の
藪蔭
(
やぶかげ
)
から高くあがる火竜の勢いと、その火の子をながめて、ホッと吐息をついた時、弁信の耳には、それが
早鐘
(
はやがね
)
のように聞え、その口が、耳までさけているように見えましたものですから
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
藪
漢検準1級
部首:⾋
18画
蔭
漢検準1級
部首:⾋
14画
“藪”で始まる語句
藪
藪蚊
藪入
藪鶯
藪蛇
藪畳
藪原
藪睨
藪地
藪柑子