よそ)” の例文
、釣りたりとよそはるゝは上手なれども、蟇口の下痢にお気つかず、私の置鈎に見事引懸り候。私の釣技うでは、旦那よりもえらく候はずや
釣好隠居の懺悔 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
及び忿怒ふんぬ(彼に対して、ある者が、服従もしくは柔順の態度を誤ってよそわなかった時に、彼の忿怒は必ず惹起されるから)
列強環視の中心に在る日本 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
左には同じ草原の細い山稜が直ぐ黒木をよそうて、縦に見る所為せいか奥深く霧の裡にぼうっと溶け込んでいる。其間の鞍部へ志すらしい道を選んで辿って行く。
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
骸骨がいこつの上をよそうて花見かな」(鬼貫)とはいうものの、花見に化粧して行く娘の姿は美しいものです。骸骨のお化けだ、何が美しかろうというのは僻目ひがめです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
しかしてこれらの坂の眺望にして最も絵画的なるは紺色なす秋の夕靄ゆうもやうちより人家ののちらつく頃、または高台の樹木の一斉に新緑によそわるる初夏しょか晴天の日である。
卑しき桂の遊女の風情によそいて、たいらの三郎御供申し、大和やまと奥郡おくごおりへ落し申したる心外さ、口惜くちおしさ。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
歴々の上﨟じやうらふたち、衣裳美々しくよそはれたるまま、かなはぬ道とさとり、並居ならびゐたるを、さもあらけなき武士たち請取うけとり、その母親にいだかせて、引上げ引上げ張付はりつけにかけ——
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おれァ、一半蔵松葉はんぞうまつばよそおいという花魁おいらんを、小梅こうめりょうまでせたことがあったっけが、入山形いりやまがたに一つぼしの、全盛ぜんせい太夫たゆうせたときだって、こんないい気持きもはしなかったぜ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
なるほど、原っぱでは、小娘マチルドが、白い花をつけた牡丹蔓ぼたんづる衣裳いしょうで、じっとしゃちこばっていた。おめかしは十分、これならまぎれもなく、オレンジの枝でよそわれた花嫁そっくりだ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
松野まつのこたへぬ、秋雨あきさめはれてのち一日今日けふはとにはかおもたちて、糸子いとこれいかざりなきよそほひに身支度みじたくはやくをはりて、松野まつのまちどほしく雪三せつざうがもとれよりさそいぬ、とれば玄關げんくわん見馴みなれぬくつそくあり
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なんとか美わしきことばの衣をよそわしめて人を欺瞞せんとするとも、かくの如き単純なる本能満足は吾人の祖先がすでに幾千年の間に経験し、その非を悟って次第に改めて来たものではないか。
現代の婦人に告ぐ (新字新仮名) / 大隈重信(著)
万瓦渾如水晶 万瓦まんがすべ水晶すいしょうよそうがごと
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)