せき)” の例文
「——ご当家から観ても、あの一せきは、中国全土、敵ならぬはない中の、ただ一つのお味方でしょう。死なしてはなりますまい」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
周延ちかのぶが描いた千代田の大奥と云う三枚続きの絵にあるようなみず築山つきやま、雪見燈籠、瀬戸物の鶴、洗いせきなどがお誂い向きに配置されて
少年 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
さむい、さむ天気てんきなどは、あさからばんまで、その霜柱しもばしらけずに、ちょうど六ぽうせきのように、またしお結晶けっしょうしたように、うつくしくひかっていることがありました。
小さな草と太陽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれは褐色かっしょく法衣ころもを着て、その顔も風体ふうていもなんだか異様にみえたが、せきにむかって親しげに話しかけた。
それは、上からたれた石灰分せっかいぶんが、かたまってできた、まっ白なせきじゅんでした。鍾乳石や石じゅんのことは、学校でおそわっていましたが、見るのは、これがはじめてです。
探偵少年 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
して元の座になほり早々歸らんとせし所へ平兵衞來り今一せきと望みけるにより又々一石うちをは挨拶あいさつもそこ/\にいとまを告て立歸り今日こそ我が思ひのたけをつうぜしからは如何なる返事へんじ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これにヒヤシンスせきでも象篏してあったら、さしあたり七万五千弗の口だ。
だいこん (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
一度山荘へ遊んだことのある博士は、其れが山腹の自然せきを切り開いた大巌窟がんくつである事を僕等に語つて是非ぜひ見て置けと言はれる。其れで馬車代だけは僕等三人で負担する事に決めて同行を約した。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
老婆は数枚の金を出して、粟と麦を一せきずつ買わせ、夜は細君と一緒の寝台に寝た。細君は初めはおそれたが、老婆が自分を可愛がってくれる心が解ったので、それからは疑い懼れぬようになった。
王成 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
欄干は支那風にしていて、庭園に太湖せきなどがおいてあった。
女童めわらははほのかなりしか小硯の赤間がせきに墨片けて
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
苗字みょうじせき、名はしゅう。——金陵きんりょう建康府けんこうふの産で、あだ名を※命べんめい(いのちしらず)三郎とよばれています」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さて義貞が、尊氏を追うには、まずその一せき一石から抜いてゆかなければ、山陽道は通りえない。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこでもし祝家荘しゅくかそうを襲って、彼の富をここへ移せば、まず数年はゆたかに兵馬を練っていられましょう。まざに一せき二鳥三鳥です。……さらに私には、もひとつの望みがある。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
パチ——と一せきいて、かまきりが、横を向き
魚紋 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
パチッ……と一せき。いい音だ。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)