盛夏せいか)” の例文
すべてスポーツにかんするもので、ちょうど盛夏せいかちかづいたから、山岳さんがく風景ふうけいや、溪谷けいこく海洋かいようのけしきなどが、にもしたしまれたのであります。
考えこじき (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしなどは盛夏せいかの食べ物に困りきっている時など、大いにそれで助けられ、大船おおふなから暑さを意とせず、毎日のように新橋へと足をのばしたものである。
握り寿司の名人 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
盛夏せいか、密閉した小室に多量のドライアイスを置き、被害者が、眠っているあいだに、それが溶けて、炭酸ガスのために死亡するという小説を、日本の作家が書いたことがある。
探偵小説の「謎」 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
すこぶる上気のぼせ性のくせにまたすこぶる冷え性で盛夏せいかといえどもかつて肌にあせを知らず足は氷のようにつめたく四季を通じて厚い袘綿ふきわた這入はいった羽二重はぶたえもしくは縮緬ちりめん小袖こそでを寝間着に用いすそ
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
はるうら/\てふともあそぶやはな芳野山よしのやまたまさかづきばし、あきつきてら/\とたゞよへるうしほ絵島ゑのしままつさるなきをうらみ、厳冬げんとうには炬燵こたつおごり高櫓たかやぐら閉籠とぢこもり、盛夏せいかには蚊帳かや栄耀えいえう陣小屋ぢんごやとして
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
雅人がじん住居すまいでもありそうな茅葺かやぶきの家、かけひの水がにわさきにせせらぐ。ここは甲山こうざんおくなので、晩春ばんしゅんの花盛夏せいかの花、いちじにあたりをいろどって、きこまれた竹のえんちりもとめずにしずかである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
盛夏せいかのころには、へちまは、まったくからたちを征服せいふくして、電燈線でんとうせんにまで、ばしていました。
へちまの水 (新字新仮名) / 小川未明(著)
だが、妙なもので寒中はよいうなぎ、美味いうなぎがあっても、盛夏せいかのころのようにうなぎを食いたいという要求が起こらない。美味いと分っていても人間の生理が要求しない。
鰻の話 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
盛夏せいかでも、白雪はくせつをいただくけんみねは、あお山々やまやまあいだから、夕日ゆうひをうしろに、のぞいていました。
しいたげられた天才 (新字新仮名) / 小川未明(著)
茶漬けは、なにもかもが口に不味まずい時、例えば盛夏せいかのように食の進まぬ時、もっとも適当な美食として働く。塩昆布などで茶漬けをやる時は、沢庵たくあん漬けなど、むしろない方がいい。
塩昆布の茶漬け (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)