百済くだら)” の例文
旧字:百濟
それから百済くだらの国の王からは、おうま一とう、めうま一頭に阿知吉師あちきしという者をつけて献上けんじょうし、また刀や大きな鏡なぞをもけんじました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
「聖徳太子伝暦」及び「太子伝補闕ほけつ記」によると百済くだら開法師、円明えんめい師、下氷新物しもついのにいもの等三人合力して建立こんりゅうしたことになっているが
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
百済野は大和やまと北葛城きたかつらぎ百済くだら村附近の原野である。「萩の古枝」は冬枯れた萩の枝で、相当の高さと繁みになったものであろう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「それも、もっとものことばである。しかしながら、百済くだら国王の貢物は、それを捨てることはできない。だれか、この神を奉ずるものはいないか。」
元寇げんこうの折、時宗公が元の使いを斬り、また遠くは高麗こま百済くだらの無礼なる使者を斬ったというような異国との断絶には当然いくらもあり得ることだが……
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それが仏滅の後五百余年、天竺に留まり、後百済くだら国に移り、一千年を経て、欽明きんめい帝の御代に日本に渡り、摂津国難波の浦の底深く金色の光を放っていた。
百済くだらわたりの螺鈿らでんの大づくゑに肘をもたせて、鏡ノ夫人おおとじはさつきから、うつらうつらと物思ひにふけつてゐる。
春泥:『白鳳』第一部 (新字旧仮名) / 神西清(著)
どこにつかえるべき他の大があったであろう。今日法隆寺や夢殿に残された百済くだらの観音は、支那のどの作品に劣るであろう。またどの作品の模倣であり得よう。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
菟道の王が百済くだら王仁わに招聘しょうへいして学ばせられたのがはじめでありますから、この御兄弟の皇子の御心こそ、そのまま中国の聖人の精神ともいってよいでしょう。
その後、百済くだらもわが国の保護を依頼して、入朝して来たので、わが国威は南朝鮮をおほひ、任那に日本府を置いて国司を任じ、事あれば将軍を派遣されたのである。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
それを見て僧都は聖徳太子が百済くだらの国からお得になった金剛子こんごうし数珠じゅずに宝玉の飾りのついたのを
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
黄金産出のことを記録してある最も古いものは『しょく日本紀』であろうと思いますが、それによりますと、聖武しょうむ天皇の天平てんぴょう二十一年の二月、百済くだらの王敬福という者が、今の
皇室の御上について申さば、神功皇后の御母方は、新羅しらぎの王子天日槍あめのひぼこの後だとあります。また桓武天皇の御生母なる高野皇太夫人は、百済くだら王家から出られたお方であります。
中宮寺ちゅうぐうじ観音、夢殿観音、百済くだら観音等の神秘は、当時の人心の驚異と憧憬とを語りつくして余さない。初唐の大いなる国民的統一と活力の勃興とは、ある意味で六朝の憧憬の実現である。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
百済くだら観音などは、長細い身体を立ちずくめで千幾百年。
冬の法隆寺詣で (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
百済くだらから来た
青い眼の人形 (新字新仮名) / 野口雨情(著)
たとえば百済くだら観音は仕切った一室にただひとり安置されてある。新しい天蓋てんがい蓮台れんだいもつくられた。すべては美々しくよそおわれ、花もささげられてある。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
それで皇后はさつそくお聞きとどけになりまして、新羅しらぎの王をおうまかいということにおきめになり、そのとなり百済くだらをもご領地りょうちにお定めになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
その頃は新羅しらぎ百済くだらの使者が立てつづけに来朝して、内臣の役目はなかなか忙しかつた。王女も結局は笑つて恕すほかはなかつた。つまりは敗けたのである。
春泥:『白鳳』第一部 (新字旧仮名) / 神西清(著)
どこにつかえるべき他の大があったであろう。今日法隆寺や夢殿に残された百済くだらの観音は、支那のどの作品に劣るであろう。またどの作品の模倣であり得よう。
朝鮮の友に贈る書 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
本朝に儒教をたふとみてもは王道わうだうたすけとするは、菟道うぢきみ百済くだら七六王仁わにを召して学ばせ給ふをはじめなれば、此の兄弟はらからきみ心ぞ、やが漢土もろこしひじりの御心ともいふべし。
これは純粋の雑戸ざっこで、熟皮なめしがわの技術に慣れた高麗こま人や、百済くだら人などがこれになったのもありましょうし、鎧作よろいつくり鞆張ともはり鞍作くらつくり等、その他一切の皮革を扱うもの、みなこれに属する訳です。
天皇欽明の十三年十月十三日、百済くだらの国の聖明王は、太夫の西部姫氏せいぼうきしを、日本に派遣して、釈迦仏の銅像と経文とを、天皇に貢物としてさし出した。天皇は、群臣にむかって間われた。
高麗こま新羅しらぎ百済くだら任那みまななど互に攻略して、其処も安住の地でないので、彼等の中には、交通のやうやく開けたのに乗じ、山紫水明にして、気候温和なるわが国に移住帰化したものが多かつた。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
よし新羅しらぎ百済くだらの海の果てへ流さるるも、死を賜うも、大聖釈尊だいしょうしゃくそんをはじめ無量諸菩薩しょぼさつが、われら凡愚煩悩ぼんのう大衆生だいしゅじょうのために、光と、あかしとを、ここにぞと立て置かれたもうた念仏の一行いちぎょうであるものを。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
東大寺や薬師寺の本尊のごとき大仏は動かしえぬにしても、救世くせ観音や百済くだら観音等は疎開可能であろう。しかし僕は仏像の疎開には反対を表明した。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
なかに徳利とくりをさげた観音の立像がある。僕は法隆寺の酒買ひ観音を思ひだした。ああ、あの百済くだら観音さ。
夜の鳥 (新字旧仮名) / 神西清(著)
天皇は百済くだらの王に向かって、おまえのところにかしこい人があるならばよこすようにとおおせになりました。王はそれでさっそく和邇吉師わにきしという学者をよこしてまいりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
その鸚鵡——百済くだらわたりのその白鸚鵡を、大海人おおしあまノ皇子へ自身でとどけたものだらうか、それとも何か添へぶみでもして、使ひに持たせてやつたものかしら……などと
鸚鵡:『白鳳』第二部 (新字旧仮名) / 神西清(著)
その鸚鵡は、たしか五年ほど前、百済くだらの使ひが奉つた一番ひのうちの一羽である。丹塗りの美々しい籠も、たしかその時のものである。それがいつの間にか、妹の額田ノ姫王の手に渡つてゐた。
春泥:『白鳳』第一部 (新字旧仮名) / 神西清(著)