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病躯
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びょうく
ふりがな文庫
“
病躯
(
びょうく
)” の例文
石原の利助の
病躯
(
びょうく
)
を助けて十手捕縄を預かっている若い新吉にしては、それくらいのあせりのあるのは無理のないことでした。
銭形平次捕物控:145 蜘蛛の巣
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
しかしその脆弱な
病躯
(
びょうく
)
中には鉄石の如き精神が存在していた。君は終始
儼然
(
げんぜん
)
として少しも姿勢を崩さず、何となく冒すべからざる風があった。
新島先生を憶う:二十回忌に際して
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
生きがいのない
病躯
(
びょうく
)
を
嘲
(
あざけ
)
っていたが、先生の唯一の幸福であった口腹の欲も、そのころから、少しずつ裏切られて来た。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
余らは居士の
病躯
(
びょうく
)
で思いもよらぬ事だと思ったが、しかし余らのいう事はもとより
容
(
い
)
れなかった。居士は平生
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
それから後は阪神附近をアチコチと流離していたが、ドコにも
容
(
い
)
れられないでとうとう九州に渡って別府に
逼息
(
ひっそく
)
し、生活に
労
(
つか
)
れた
病躯
(
びょうく
)
を
抱
(
かか
)
えて淋しく暮した。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
▼ もっと見る
冷い壁の下の方へ寄せて、
隅
(
すみ
)
のところに小窓が切ってある。その小窓の側が宗蔵の
病躯
(
びょうく
)
を横える場処である。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
それだけが唯一の手がかりに過ぎなかったが、半兵衛の熱意と、その
病躯
(
びょうく
)
を押して敵国へ使いに来た壮志とは、ついに相手の心をうごかさずにはおかなかった。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかしわたしは
床
(
とこ
)
の
間
(
ま
)
に置き捨てた
三味線
(
さみせん
)
のふと心付けば不思議にもその皮の裂けずにいたのを見ると共に、わが
病躯
(
びょうく
)
もその時はまた
幸
(
さいわい
)
例の腹痛を催さぬ
嬉
(
うれ
)
しさ。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
病躯
(
びょうく
)
を起して、この内憂外患の時節に、一方には倒れかけた幕府の威信を保ち、一方には諸国の頑強な
溢
(
あぶ
)
れ
者
(
もの
)
を処分してゆく、
悪
(
にく
)
まれ
役
(
やく
)
は会津が一身に引受けたのであります。
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
九十に近い老僧が
瘠
(
や
)
せ
枯
(
から
)
びた
病躯
(
びょうく
)
に古泥障を懸けて翼として胡蝶の舞を舞うたのであった。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
そして、帰って来れば、不具者か敗残の
病躯
(
びょうく
)
か、多くは
屍
(
かばね
)
になって帰って来るのだ。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
夜を徹して予が
病躯
(
びょうく
)
を
暖
(
あた
)
ためつつある真最中なりしなり、さて予は我に還るや、
俄
(
にわ
)
かにまた呼吸の
逼迫
(
ひっぱく
)
、
凍傷
(
とうしょう
)
の
難
(
なや
)
み、眼球の
激痛
(
げきつう
)
等を覚えたり、
勿論
(
もちろん
)
いまだ
眼
(
まなこ
)
を開くこと
能
(
あた
)
わざるのみならず
寒中滞岳記:(十月一日より十二月廿一日に至る八十二日間)
(新字新仮名)
/
野中至
(著)
それは
病躯
(
びょうく
)
を
支
(
ささ
)
えて、ともかくも此処まで生きのびてきた自分が、もはや青春の
仮説
(
かせつ
)
の外に遠くはみだしていることを意味する。前述の『親馬鹿の記』の中で、私は次のごとき感慨をもらした。
親馬鹿入堂記
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
死を覚悟して、無理無体に歩ませてゆく
病躯
(
びょうく
)
であった。口は
渇
(
かわ
)
いてしまう。鼻腔はあらい
呼吸
(
いき
)
につかれる。そして蒼白な
額
(
ひたい
)
に、髪の根から冷たい汗さえながれていた。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
さればとて故郷の
平蕪
(
へいぶ
)
の村落に
病躯
(
びょうく
)
を
持帰
(
もちかえ
)
るのも
厭
(
いと
)
わしかったと見えて、
野州
(
やしゅう
)
上州
(
じょうしゅう
)
の山地や温泉地に一日二日あるいは三日五日と、それこそ
白雲
(
はくうん
)
の風に漂い、
秋葉
(
しゅうよう
)
の空に
飄
(
ひるがえ
)
るが如くに
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「さしあたってちょっと触れたくない問題があるんでね。どうせ何とかしなくちゃならないにしても、今は誰にも逢いたくないんだ」道太はあの時
病躯
(
びょうく
)
をわざわざそのために運んできて
挿話
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
と、また
病躯
(
びょうく
)
を責めて、詫び入るらしい気ぶりを抑えて、秀吉は彼のことばを不意に奪った。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
美貌
(
びぼう
)
の父は
入婿
(
いりむこ
)
であったが、商才にも
長
(
た
)
けた実直な勤勉家で、田地や何かも
殖
(
ふ
)
やした方であったが、鉄道が敷けて廻船の方が挙がったりになってからも、
病躯
(
びょうく
)
をかかえて各地へ商取引をやっていた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「ほかならぬ日、
病躯
(
びょうく
)
を押しても出仕をと存じましたが、何ぶん一人の母が余りにも案じますので、つい親心にほだされて、参列を怠りました。どうぞいかようにもご処分のほどを」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
病躯
(
びょうく
)
を押して下ったが、
腰越
(
こしごえ
)
にて
阻
(
はば
)
められ、遂に、鎌倉へ入るも許させ給わず、空しく京へ立ち戻って来たが……骨肉の兄と弟とが、かく心にもなく
隔
(
へだ
)
てられ、浅ましい
相剋
(
そうこく
)
の火を散らすことよと
日本名婦伝:静御前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それが、
病躯
(
びょうく
)
を
削
(
けず
)
ってゆく——
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“病躯”の意味
《名詞》
病躯(びょうく)
病気の躯。病に罹った体。
(出典:Wiktionary)
病
常用漢字
小3
部首:⽧
10画
躯
漢検準1級
部首:⾝
11画
“病”で始まる語句
病
病気
病人
病院
病氣
病臥
病葉
病床
病褥
病室