獣物けだもの)” の例文
旧字:獸物
あんな獣物けだものが何を食うんだか知りませんけれど、煙突から煙りがひどく出るときには、いつでも家じゅうに変な匂いがするんですよ
その腕を広げて、あろうことか、私にみだらしいいどみを見せてまいったのです。そして、その獣物けだもののような狂乱が、とうとう私に……
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そうれまんだきもべ焼けるか。こう可愛めんこがられても肝べ焼けるか。可愛めんこ獣物けだものぞいわれは。見ずに。いんまになら汝に絹の衣装べ着せてこすぞ。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
虫や獣物けだものの世界に、草や木の世界に、星や月の世界に、一口に言えばこの大きな大自然の中に、どんなことが行われているのか。
「そこで、おれの考えじゃあ、この一件は二つの筋が一つにこぐらかっているらしい。まず人を啖い殺すやつは獣物けだものだな」
半七捕物帳:23 鬼娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
わたすかぎり、初雪はつゆきにいろどられて、しろ世界せかいなかを、金色こんじきおびのように、かわかわれ、田圃たんぼは、獣物けだもの背中せなかのように、しまめをつくっていました。
美しく生まれたばかりに (新字新仮名) / 小川未明(著)
鳥や獣物けだものがびっくりして逃げ出すくらいのものだ。アア、君はじいや夫婦が、その声を聞きつけて、助けに来てくれると思っているんだね。フフフ……。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ところが、多くの場合男は女にとつて天使エンゼルどころか、牛のやうに鈍間のろまで、おまけに牛のやうに獣物けだものである。
この男が彼の女の馬車を御して来たのですが、あの獣物けだもの連中は、この若者を引きずり降ろして、棍棒でやっつけたのだな。これはこのまま寝かしておきましょう。
「こんな獣物けだものは痛え思いをさせなくっちゃわからねえ、物の道理を言って聞かせてもわからねえ野郎だ」
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そんなら沢山も有りません、金はわずかだが、このうしろの山の焚木たきゞうちの物だから、山のわらびを取っても夫婦が食って行くには沢山ある、また此所ここうすれば此所で獣物けだものが獲れる
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
血に渇いた獣物けだもののような心持で、闇の夜を狙って外へ出ては、見境もなく人を殺して歩いた——それに相違あるまい——俺はどうしてこんなつまらない事が見透せなかったんだろう
大炊介の人柄は、血の荒れの見え獣物けだものじみた武辺流のなかでは、たしかに一風変った存在だったろうが、それはそれだけのもので、冷静な少女の心を魅するほどの力があったとは思えない。
うすゆき抄 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
彼女は、臆病おくびょう獣物けだものが、何ものかを避けるように飛びのいて、ふたたび、その忌まわしい場所に視線を向けようとはしなかったのである。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「それは露路の奥の垣根に引っかかっていたのよ。勿論、あすこらのことだから何がくぐるめえものでもねえが、なにしろそれは獣物けだものの毛に相違ねえ」
半七捕物帳:23 鬼娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
瑠璃子は、獣物けだものの様な叫び声を発しながら、歯をむき出し、爪を立てて、死にもの狂いに武者振りついて来た。
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
獣物けだものが自分のをめんこがるやうなもんだ。何んにもわからねえでめんこがつてゐたんだ。だから俺はこんなに馬鹿になつたども、俺はお袋だけは好きだつた。
(新字旧仮名) / 有島武郎(著)
そして、あわれな人間の生活の有様や、うえいているあわれな獣物けだものなどの姿をながめたのであります。
月と海豹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
獣物けだもののような東海坊にくれてやる気にもなりません
と汚ならしい、獣物けだものに触れるような血相で、ふるえつつ前方を指差すのであったが、そうしてから法水の腕にもたれて、今度も異様な言葉を呟くのだった。
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「むむ、どうであんなところの番頭なんていうものは、判らねえ獣物けだものが多いもんだ」と、半七は笑っていた。
半七捕物帳:29 熊の死骸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
物珍しいものを見るという様子をしてはいたけれども、心の中には自分の敵がどんな獣物けだものであるかを見きわめてやるぞという激しい敵愾心てきがいしんが急に燃えあがっていた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
食卓しょくたくうえには、いろいろのくだものや、さかなや、とりや、獣物けだものにくなどがならべられ、また、いろのかわったさけが、めいめいのまえにおいてあったコップに、そそがれていました。
雪の上の舞踏 (新字新仮名) / 小川未明(著)
死美人の背中に傷つけられた「恐怖王」とは抑々そもそも何者であるか、あの写真を見ても胸の悪くなるゴリラ男は、一体人間なのか、それとも人間によく似た獣物けだものではないのか。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
獣物けだものらしいな」と、半七はその紙包みをあけて見て云った。「犬や猫じゃ無さそうだ。なんの毛だろう」
半七捕物帳:29 熊の死骸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
とりや、獣物けだもののすることは、人間にんげんのごとく、そうしくじりがないものです。しかし、だれもいないとおもったのがそうでなかった。いさむくんと賢二けんじくんが、すずめをさがしていたのです。
ねずみの冒険 (新字新仮名) / 小川未明(著)
幸吉は追いつめられた獣物けだものの様に、目を血走らせ、やっきとなって叫んだ。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
さあ、何もかも正直に云ってしまえ。辻番の老爺おやじだって、もうむく犬を抱いて寝る時候じゃあねえのに、なんだって手前のからだに獣物けだものの毛がくっ付いているのか、わけを云え
半七捕物帳:29 熊の死骸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
彼は獣物けだものの様に咆哮ほうこうして、白いテープに向って突進した。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「人間の住んでいる町は、美しいということだ。人間は、魚よりもまた獣物けだものよりも人情があってやさしいと聞いている。私達は、魚や獣物の中に住んでいるが、もっと人間の方に近いのだから、人間の中に入って暮されないことはないだろう」
赤い蝋燭と人魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なにか商売の獣物けだものを売ることに就いて、兄貴の作右衛門がはじめて江戸へ出て来たのは文化二年の暮で、あくる年の春まで逗留しているうちに、ふと妙な気になったのだと云います。
半七捕物帳:18 槍突き (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
吉原の堤下にお紺という獣物けだもの使いで、たちのよくない女が住んでいるという。
半七捕物帳:23 鬼娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)