わざはひ)” の例文
彼女が、いま五年後にそのわざはひを思ふ時、痛みは古く思出の淡いことを恐れた。自分の災は新らしい、自分の痛みは新らしい。
三十三の死 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
是故にいかなるわざはひのわが身にせまるやを聞かばわが願ひ滿つべし、これあらかじめ見ゆる矢はその中る力弱ければなり。 二五—二七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
何故なぜかと云ふと、この二三年、京都には、地震ぢしんとか辻風とか火事とか饑饉とか云ふわざはひがつゞいて起つた。そこで洛中らくちうのさびれかたは一通りでない。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
此ののちは里人おもきわざはひをのがれしといへども、なほ僧が生死をしらざれば、疑ひ恐れて人々山にのぼる事をいましめけり。
章吉、名は王臣わうしんあざな以寧いねい箕山きざん猶賢いうけんと号した。わざはひに遭ふものは皆其族人であつたらしい。擾乱の由来等は不詳である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
友のいふ、是は灵石れいせきなり、人の持ものにあらず、家にあらば必わざはひあるべし、はやく打やぶりてすつべしと。
わざはひおこれるもとひと
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
見て大に悦びまづ是にてわざはひたちたれば更に心殘こゝろのこりなし大望成就じやうじゆうたがひなし今は此地に用はなしいそぎ他國へ立越たちこえん幸ひ濃州のうしう谷汲の長洞村ほらむら法華ほつけ山常樂院長洞寺の天忠日信と云はおや藤井紋太夫の弟にて我爲には實の伯父をぢなるがかゝる事の相談には屈強くつきやう軍略ぐんりやく人にて過つるころおん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さきのほど人なきを見てむすめごをさそひいだししに、おん身のかへり給ひしこゑにおそれわれはにげさりしが、むすめごがかゝるわざはひありしときゝてつら/\思ふに
事によると、これはそのすがめわざはひされて、彼の柘榴口を跨いで出る姿が、見えなかつたからかも知れない。
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
一四九身禊みそぎして一五〇厭符えんぷをもいただき給へと、いざなひて陰陽師の許にゆき、はじめよりつばらにかたりて此のうらをもとむ。陰陽師うらかうがへていふ。わざはひすでに一五一せまりてやすからず。
当光山金岳寺といふ。真言宗なり。旧年わざはひにかかりて古物存するものなし。茅葺仁王門あり。金剛力士は雲慶の作といふ。松五本ありて五輪塔存す。これ聖武のみさゝぎなりといふ。此日暑甚し。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
山家にてはなだれほふらをさけんため其わざはひなき地理をはかりて家を作る。ほふらに村などつぶれたる奇談きだんとしごろきゝたるがあまたあれど、うるさければしるさず。
老和尚三七四眼蔵めんざうをゐざり出でて、此の物がたりを聞きて、そは浅ましくおぼすべし。今は老朽おいくちて三七五げんあるべくもおぼえはべらねど、君が家のわざはひもだしてやあらん。三七六まづおはせ。
鎮火したのは翌二十日のよひ五つ半である。町数まちかずで言へば天満組四十二町、北組五十九町、南組十一町、家数いへかず竈数かまどかずで言へば、三千三百八十九軒、一万二千五百七十八戸がわざはひかゝつたのである。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
友のいふ、是は灵石れいせきなり、人の持ものにあらず、家にあらば必わざはひあるべし、はやく打やぶりてすつべしと。