流盻ながしめ)” の例文
「それはナ天下の権を握つたら愉快だらうが、」と懸賞小説家は流盻ながしめに冷笑しつ。「君等きみたちのやうな壮士の仲間入りは感服しないナ。」
貧書生 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
魚屋の言葉を真実だとすると、擁剣蟹は白熱した太陽の正視を怖れているのみならず、また青白い満月の流盻ながしめをすらも嫌がっているのだ。
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
互に歩み寄りて一間ばかりにちかづけば、貫一は静緒に向ひて慇懃いんぎんに礼するを、宮はかたはらあたふ限は身をすぼめてひそか流盻ながしめを凝したり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ツイと横を向きながら、おかしく、流盻ながしめそっくと、今度は、短冊の方からあごでしゃくる。顎ではない、舌である。細く長いその舌である。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
愉快ゆくわい々々、世界一せかいいち王樣わうさまだつて、此樣こん面白おもしろられるものでない。』と水兵すいへいども雀躍じやくやくした。日出雄少年ひでをせうねん猛狒ゴリラ死骸しがい流盻ながしめやりて
お駒は、ほんのりべにをさしたやうな圓い顏に笑みを浮べて、後の半分は聞えぬほどの小ひさい聲で、定吉を流盻ながしめに見ながら言つてから、竹丸に
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
で、何處までも末頼母しい情人の樣に、態度をくづさず女の傍に密接くつついて歩きながら滿心の得意が、それだけで足らず、ちよつ流盻ながしめを使つて洋裝の二人連を見た。其麼どんな顏をしてけつかるだらうと思つて。
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
白痴あはう泣出なきだしさうにすると、うらめしげに流盻ながしめながら、こはれ/\になつた戸棚とだななかから、はちはいつたのを取出とりだして手早てばや白痴あはうぜんにつけた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたくし春枝夫人はるえふじんこのせきつらなつたときには丁度ちやうどある年増としま獨逸ドイツ婦人ふじんがピアノの彈奏中だんそうちゆうであつたが、この婦人ふじんきはめて驕慢けうまんなる性質せいしつえて、彈奏だんそうあひだ始終しゞうピアノだいうへから聽集きゝてかほ流盻ながしめ
されどかくそろひて好き容量きりよういまだ見ずと、静緒は心に驚きつつ、蹈外ふみはづせし麁忽そこつははや忘れて、見据うる流盻ながしめはその物を奪はんとねらふが如く、吾を失へる顔は間抜けて、常は顧らるるかたちありながら
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
夢見ゆめみごこちの流盻ながしめや、かねひゞきあをびれに
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
夢見ごこちの流盻ながしめや、鐘の響の青びれに
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)