おまえ)” の例文
幼少の頃、将来いまにおまえは何に成るの? と能く聞かれたものでした。すると私は男の子のよう双肩かた聳やかして女弁護士! と答えました。
職業の苦痛 (新字新仮名) / 若杉鳥子(著)
おまえにもいろいろ世話せわになりました……。』こころなかでそうおもっただけでしたが、それはかならずうまにもつうじたことであろうとかんがえられます。
『何だ。この餓鬼がきめ。人をばかにしやがるな。トマト二つで、この大入の中へおまえたちをんでやってたまるか。せやがれ、畜生ちくしょう。』
黄いろのトマト (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
このはなしおまえさえ知らないのだものだれが知っていよう、ただ太郎坊ばかりが、太郎坊の伝言ことづてをした時分のおれをよく知っているものだった。
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
おまえになにを云ってもわかるまいが、ほんとにしっかりせんと、鮫洲さめず大尽だいじんの山田も、屋根へぺんぺん草が生えるぞ、しっかりしろよ、しっかり
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
言句もんくばかり言ってるさ、構わないでおくがい。なあにおまえが先へ来たって何も仔細しさいはなかろうじゃないか。」
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蛇いわく僕も頭痛持ちだが蛇の頭痛療法を知ると同時に犬の頭痛療法を心得おらぬから詰まらない。犬いわくおまえの事はどうでもよい、とにかくおれの頭痛を治す法を教えてくれ後生ごしょうだ。
別条はない案じるなと云わるるだけになお案ぜられ、その親分の家を尋ぬれば、そこへおまえが行ったがよいか行かぬがよいかおれには分らぬ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「ほんとに何人もいないから、遠慮はいりません」少女の方を見て、「お客さんは、はにかんでいらっしゃるから、おまえだちがあげておやりよ」
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
おまえおれの謂うことをかんで草刈をやろうものなら、やっぱり日本人ジャパニイスの馬鹿になるのだ。
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
良人おっとはしきりにうま鼻面はなづらでてやりながら『おまえもとうとう出世しゅっせして鈴懸すずかけになったか。イヤ結構けっこう結構けっこう! わしはもう呼名よびなについて反対はんたいはせんぞ……。』そうって、わたくしほうかえりみて
これこのわたしの今着て居るのも去年の冬の取りつきに袷姿あわせすがたの寒げなを気の毒がられてお吉様の、縫直なおして着よと下されたのとはおまえの眼にはうつらぬか
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「帰れ、帰れ、帰っておくれ、畜生ちくしょうおまえが女狂いをしたばかりに、とうとう俺を殺しちまった、帰れ、帰っちまえ」
一握の髪の毛 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「何しろ、おまえの方からゆすり込んだものと私は思うな。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『まァ若月わかつき……おまえ、よくてくれた……。』
「そうだった、おまえに見せてやるものがあったね、それでは見せてあげるから、わたしをれてっておくれよ」
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
一体ならば迎いなど受けずともこの天変を知らず顔では済まぬおまえが出ても来ぬとはあんまりな大勇、汝のお蔭で険難けんのんな使いをいいつかり、忌々いまいましいこのこぶを見てくれ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「吾のいうことには、おまえ、きっと従うであろうな。」
琵琶伝 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
赤い衣服きものを着る結局おちおまえのトドの望なのかエ、お茶人過ぎるじゃあ無いか。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「よく、おまえ、別れることが出来たな。」
琵琶伝 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
下らないことをお言いで無い、そうすりゃあおまえはどうするというんだエ。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
おまえ、よくたな。」
琵琶伝 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
訳がわからないよおまえの云うことア、やっぱり強盗におなりだというのかエ。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)