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格好
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かつかう
それは
一方ならぬ大騒で、世話人らしい
印半纏を着た五十
格好の
中老漢が頻りにそれを指図して居るにも
拘はらず、一同はまだ好く喞筒の
遣ひ方に
慣れぬと覚しく
其時同僚は、
一口に
説明の
出來る
格好な
言葉を
有つてゐなかつたと
見えて、まあ
禪學の
書物だらうといふ
樣な
妙な
挨拶をした。
宗助は
同僚から
聞いた
此返事を
能く
覺えてゐた。
けれども
鞘の
格好は
恰も
六角の
樫の
棒の
樣に
厚かつた。よく
見ると、
柄の
後に
細い
棒が二
本並んで
差さつてゐた。
結果は
鞘を
重ねて
離れない
爲に
銀の
鉢卷をしたと
同じであつた。
主人は
それから
大きな
赤い
橙を
御供の
上に
載せて、
床の
間に
据ゑた。
床には
如何はしい
墨畫の
梅が、
蛤の
格好をした
月を
吐いて
懸つてゐた。
宗助には
此變な
軸の
前に、
橙と
御供を
置く
意味が
解らなかつた。