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板葺
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いたぶき
ふりがな文庫
“
板葺
(
いたぶき
)” の例文
板葺
(
いたぶき
)
の屋根は朽ち乾いて
松毬
(
まつかさ
)
のようにはぜ、小さな玄関の柱やはめ板は雨かぜに
曝
(
さら
)
されて、洗いだしたように木目が高くあらわれていた。
日本婦道記:糸車
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
木曾路
(
きそじ
)
の紅葉を思わせるような深い色の日は、石を載せた
板葺
(
いたぶき
)
の屋根の上にもあった。お種は自分が生れた山村の方まで思いやるように
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その村の
板葺
(
いたぶき
)
屋根が、木の間がくれにちらちら光っている、ちょうどそのあたりで、高地の
紺青色
(
こんじょういろ
)
が、近くの鮮かな緑色にとけこんでいる。
リップ・ヴァン・ウィンクル:ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
町へはいって
板葺
(
いたぶき
)
の低い家並みの後ろに、裸木の雑木山が、風の無いぽか/\日に照らされて居るのを見ると、如何にも早春らしい気がする。
鰯
(新字新仮名)
/
岩本素白
(著)
板葺
(
いたぶき
)
屋根の一かたまりが小さく眺められ、その側を流れる渓流をさしはさんで、直ちに前方の山々が同じ紅葉の錦に覆われて重なり聳えていた。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
▼ もっと見る
香取秀真氏が大学病院で詠まれた歌に「風の音あめのしづくの音聞かむ
板葺
(
いたぶき
)
やねを恋ひおもふかな」というのがあった。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
壊
(
こわ
)
れた板塀やら竹垣根が乱雑とつづいている。手入れの見えない草や木の間に、黒い棟と
板葺
(
いたぶき
)
の屋根と壁と——同じような家ばかりが幾つも見えた。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
其は他の下級将校官舎の如く、
板塀
(
いたべい
)
に囲われた見すぼらしい
板葺
(
いたぶき
)
の家で、
垣
(
かき
)
の内には柳が一本長々と
枝
(
えだ
)
を
垂
(
た
)
れて居た。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
これに反して団子坂に近い処には、道の東側に人家が無く、道は
崖
(
がけ
)
の上を横切っていた。この家の前身は小径を隔ててその崖に臨んだ
板葺
(
いたぶき
)
の小家であった。
細木香以
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
此
屋上
(
やね
)
の雪は冬のうちしば/\掘のくる度々に、
木鋤
(
こすき
)
にてはからず
屋上
(
やね
)
を
損
(
そん
)
ずる㕝あり。我国の
屋上
(
やね
)
おほかたは
板葺
(
いたぶき
)
なり、屋根板は他国に
比
(
くらぶ
)
れば
厚
(
あつ
)
く
広
(
ひろ
)
し。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
知らぬ間に荒れた
板葺
(
いたぶき
)
のひまから月が洩れて、
乳児
(
ちご
)
の顔にあたり、それを無気味に青ざめさせていた。
姨捨
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
神主の
祝詞
(
のりと
)
が「聞こし召せと、かしこみ、かしこみ」と途切れ途切れに聞える時には、素朴な
板葺
(
いたぶき
)
のかけ茶屋の前を通って、はや小御岳神社へと
詣
(
もう
)
でるころであった。
不尽の高根
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
初めはいかめしい
築地
(
ついじ
)
の邸がつゞいていたのが、だん/\みすぼらしい
網代
(
あじろ
)
の
塀
(
へい
)
や、屋根に石ころを置いた
佗
(
わ
)
びしい低い
板葺
(
いたぶき
)
の家などになったが、それも次第に
疎
(
まば
)
らに
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
往来の砂をかすめるばかり、
板葺
(
いたぶき
)
、
檜皮葺
(
ひわだぶき
)
の屋根の向こうに、むらがっているひでり
雲
(
ぐも
)
も、さっきから、凝然と、金銀銅鉄を
熔
(
と
)
かしたまま、小ゆるぎをするけしきはない。
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
干物
(
ほしもの
)
は屋根でする、
板葺
(
いたぶき
)
の
平屋造
(
ひらやづくり
)
で、お辻の家は、
其真中
(
そのまんなか
)
、泉水のある
処
(
ところ
)
から、
二間梯子
(
にけんばしご
)
を懸けてあるので、
悪戯
(
いたずら
)
をするなら
小児
(
こども
)
でも
上下
(
あがりおり
)
は自由な位、干物に不思議はないが、待て
処方秘箋
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
その窓の横には「やもり」が
一疋
(
いっぴき
)
這ふて居る。屋根は
板葺
(
いたぶき
)
で、石ころがいくつも載せてある。かういふ家が画の正面の大部分を占めて居つて、その家は低い石垣の上に建てられて居る。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
そこに
下見囲
(
したみがこい
)
、
板葺
(
いたぶき
)
の真四角な二階建が
外
(
ほか
)
の家並を圧して立っていた。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
雪国の
習
(
ならい
)
で、
板葺
(
いたぶき
)
の軒は低く、奥の方は昼も薄暗い。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その地所には
板葺
(
いたぶき
)
の小屋が建っていました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
鼠色の雲に
掩
(
おお
)
われた空から、それはまっすぐに降って来て、
板葺
(
いたぶき
)
のはしゃいだ屋根を叩き、すっかり朽ち割れている
庇
(
ひさし
)
を叩いた。
花も刀も
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
板葺
(
いたぶき
)
の屋根の上に降積つたのが
掻下
(
かきおろ
)
される度に、それがまた恐しい音して、往来の方へ崩れ落ちる。幾度か丑松は其音の為に驚かされた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
此
屋上
(
やね
)
の雪は冬のうちしば/\掘のくる度々に、
木鋤
(
こすき
)
にてはからず
屋上
(
やね
)
を
損
(
そん
)
ずる㕝あり。我国の
屋上
(
やね
)
おほかたは
板葺
(
いたぶき
)
なり、屋根板は他国に
比
(
くらぶ
)
れば
厚
(
あつ
)
く
広
(
ひろ
)
し。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
縁で
視
(
なが
)
めても、二階から伸上っても、それに……地方の事だから、
板葺
(
いたぶき
)
屋根へ上って
眗
(
みまわ
)
しても、実は
建連
(
たてつらな
)
った
賑
(
にぎやか
)
な
町家
(
まちや
)
に隔てられて、その方角には、橋はもとよりの事、川の
流
(
ながれ
)
も見えないし
絵本の春
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
板葺
(
いたぶき
)
の屋根、
軒廂
(
のきびさし
)
、すべて目に入るかぎりのものは白く埋れて了つて、家と家との間からは青々とした
朝餐
(
あさげ
)
の煙が静かに立登つた。小学校の
建築物
(
たてもの
)
も、今、日をうけた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
風雪を防ぐ為に石を載せた
板葺
(
いたぶき
)
の屋根を見ると、深山の生活も思いやられます。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
三吉が妻子を連れて移ろうとする家の
板葺
(
いたぶき
)
屋根は新緑の間に光って見えて来た。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
板
常用漢字
小3
部首:⽊
8画
葺
漢検準1級
部首:⾋
12画
“板葺”で始まる語句
板葺屋根
板葺小舎