板屋根いたやね)” の例文
もう加減かげんあるいてつて、たにがお仕舞しまひになつたかとおも時分じぶんには、またむかふのはう谷間たにま板屋根いたやねからけむりのぼるのがえました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
巨大きよだいなるくすのきらさないために、板屋根いたやねいた、小屋こやたかさは十ぢやうもあらう、あしいただいせかけたのが突立つツたつて、ほとん屋根裏やねうらとゞくばかり。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
潜門くゞりもん板屋根いたやねにはせたやなぎからくも若芽わかめの緑をつけた枝をたらしてゐる。冬の昼過ひるすひそかに米八よねはちが病気の丹次郎たんじらうをおとづれたのもかゝる佗住居わびずまひ戸口とぐちであつたらう。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
それはたいていは屋根をく材料のちがいにともなうもので、同じ草屋根くさやねでも土地によって、すこしは傾斜がちがうけれども、そのちがいは、じつはわずかなものなので、それが板屋根いたやねとなると
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
屋根やねいしは、むらはづれにある水車小屋すゐしやごや板屋根いたやねうへいしでした。このいし自分じぶんつて板屋根いたやねうへから、毎日々々まいにち/\水車すゐしやまはるのをながめてました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
この風やこの雨には一種特別の底深そこぶかい力が含まれてて、寺の樹木じゆもくや、河岸かはぎしあしの葉や、場末ばすゑにつゞく貧しい家の板屋根いたやねに、春や夏には決して聞かれない音響おんきやうを伝へる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
新築はなるべく板屋根いたやねにするようにと指図さしずした。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
かぜゆき水車小屋すゐしやごやまつてしまひさうなました。いし毎日まいにちすわつてるどころか、どうかするとかぜばされて、板屋根いたやねうへからころがりちさうにりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)