昨夜よべ)” の例文
さらには、次の都へのお旅路とて、ふたたび、昨夜よべのごときご不安はおかけ仕りませぬ。いかようとも、われらお送り申しあげますれば
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
翌日は朝より赤塚氏のひ来給ひてさまざまの興ある話を聞かせ給ひさふらふ昨夜よべの散歩に天草あたりよりきたれる哀れなる女達の住める街を通り給ひて
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
あゝ、それがいか許り昨夜よべの八つ橋との逢瀬あふせを、睦言むつごとを、絢爛多彩な絵巻物として、無言のうちに悩ましく聴くものゝ心の中に想像させて呉れたらうことよ。
吉原百人斬り (新字旧仮名) / 正岡容(著)
いぶかりつゝもひらきて読めば、とみの事にてあらかじめ知らするに由なかりしが、昨夜よべこゝに着せられし天方大臣に附きてわれも来たり。伯のなんぢを見まほしとのたまふにく来よ。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
翌朝あくるあさ目を覚ました時は、雨戸の隙を潜つて空寒うそさむく障子を染めた暁の光の中に、石油だけは流石に凍らぬと見えて、心を細めて置いた吊洋燈つりランプ昨夜よべの儘にうつすりと点つて居たが
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
... 老い枯れし老婆の御身に嫌はるゝは、可惜あたら武士ものゝふ戀死こひじにせんいのちを思へば物の數ならず、るにても昨夜よべの返事、如何に遊ばすやら』。『幾度申しても御返事は同じこと、あな蒼蠅うるさき人や』
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
此請は我が預め期したるところなりき。われは好機會を得て、昨夜よべの暴風と難船との事を敍し、前に友の雄辯もて遂ぐること能はざりしところをも、詞章もて遂げんとしたりしなり。
さかみづきおのれわすれて昨夜よべはありき今朝けさは菜の葉の風見てぞゆく
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
くだり船昨夜よべ月かげに歌そめし御堂みだうの壁も見えず見えずなりぬ
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
廊馬道らうめどういくつか昨夜よべの国くればうぐひす啼きぬ春のあけぼの
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
わがのぼる脚榻きやたつ昨夜よべの霜おけり高き小枝さえだに柿の實ちぎる
続生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
花はみな昨夜よべの小雨にちりはてて朝晴あさはれしろし宇多の中山
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
うみなやめる昨夜よべなりし
友に (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
昨夜よべひと夜
一点鐘 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
かかる時船ばたのりんの光の時得顔ときえがほ金光きんくわうを散らしさふらふこと、はためざましくさふらひき。カトリツクの尼君昨夜よべ紐にてりんを釣られしなど語る人もおはしき。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
いぶかりつつもひらきて読めば、とみの事にてあらかじめ知らするによしなかりしが、昨夜よべここに着せられし天方あまがた大臣につきてわれも来たり。伯のなんじを見まほしとのたもうによ。
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
昨夜よべは節所を窘歩きんぽし来り、昼は終日戦ひ暮れたり、目ざすも知らぬ夜の道、小笹をざさが上の露もろとも、おちまろび、起きては倒れ、倒れては起き上り急ぎしが、せめて月をよすがにせむと
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雨戸の隙を潜ってうそ寒く障子を染めた曉の光の中に、石油だけは流石に凍らぬと見えて、しんを細めて置いた吊洋燈つるしランプ昨夜よべの儘にうつすりとともつて居たが、茶を注いで飮まずに置いた茶碗が二つに割れて
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ひらきかけて黄にぞこごれる玉蘭はくれんは時ならぬ寒波かんぱ昨夜よべかいたりし
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
春の山懸樋かけひの水のとまりしを昨夜よべの狐とにくみたまひぬ
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
會話は昨夜よべの暴風の事に及べり。
昨夜よべうたね足らぬ
文月のひと日 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
吾が門にさし入る月のかげ見れば昨夜よべのあらしは激しかりにし
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
春の川のりあひ舟のわかき子が昨夜よべとまりうたねたましき
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
吾が門にさし入る月のかげ見れば昨夜よべのあらしは激しかりにし
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
歌にねて昨夜よべ梶の葉の作者見ぬうつくしかりき黒髪の色
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
朝の田に澄みつつあかる水のいろ昨夜よべ氷雨ひさめかふりたまりたる
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
昨夜よべ磯に得たる刺櫛
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
朝の田に澄みつつあかる水のいろ昨夜よべ氷雨ひさめかふりたまりたる
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
蜜柑畑から、やんさのほい、昨夜よべ逃げた、ばいとこずいずい。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
月の路やや移るらし昨夜よべよりはいくらか風も涼しくおもほゆ
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)