もま)” の例文
せしが縁と成て其後毎夜まいよ呼込ではもませけるにいと上手なれば政太夫も至極しごくに歡び療治をさせける處城富は稽古けいこを聞感にたへて居る樣子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しばらく唖然あぜんと突っ立っていたぼくは、折から身体をして行く銀座の人混ひとごみにもまれ、段々、酔いが覚めて白々しい気持になるのでした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
御兄さんの乗って居らッしゃる列車くるまを探したんですもの、人にもまれ揉れて押除けられたり、突飛ばされたりしながら。
昇降場 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
世間に言う姦婦かんぷとは多くは斯る醜界に出入し他の醜風にもまれたる者にして、其姦もとより賤しむ可しと雖も、之を養成したる由来は家風に在りと言わざるを得ず。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ヂュリ なんわしもますのぢゃ? 其樣そのやうおそろしいうなごゑ地獄ぢごくでなうてはかれぬはずぢゃ。
雨にも打たれ風にももまれ、往時を想うて泣き今に当って苦しみ、そして五年の歳月としつきよどみながらも絶ず流れて遂にこの今のあわかたまりのような軽石のような人間を作りあげたのである。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
然し内の浜路は困る、信乃にばかり気をもまして、余り憎いな、そでない為方しかただ。これから手紙を書いて思ふさま言つてらうか。憎いは憎いけれど病気ではあるし、病人に心配させるのも可哀かあいさうだ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
旗と、人と、体臭たいしゅうと、あせに、もまれ揉れているうち、ふと、ぼくは狂的な笑いの発作ほっさを、我慢がまんしている自分に気づきました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
もま不幸ふかうの上に大不幸だいふかう異見いけんらしくも言散しサア何處いづこへなり勝手に行とおもての方へ突出つきいだ泣倒なきたふれたる千太郎を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
彼はあやふきをすくはんとする如くひしと宮に取着きて匂滴にほひこぼるる頸元えりもとゆる涙をそそぎつつ、あしの枯葉の風にもまるるやうに身をふるはせり。宮も離れじと抱緊いだきしめて諸共もろともに顫ひつつ、貫一がひぢみて咽泣むせびなきに泣けり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
もませ呉んと一同にて仕組しくみしことゆゑ千太郎の云ふ事を少しも聞入きゝいれず御養父がもしわからぬ叱言こごとを言れなば仲間一同にて引受ひきうけ貴樣おまへ御迷惑ごめいわくかけまじ一年にたゞ一度の參會故夫を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)