手帳てちょう)” の例文
赤シャツの農夫はのそばの土間に燕麦えんばくわら一束ひとたばいて、その上に足をげ出してすわり、小さな手帳てちょうに何か書きんでいました。
耕耘部の時計 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
しかし時計とけいはどうしたろう、それからポッケットにれていた手帳てちょうも、巻莨まきたばこも、や、ニキタはもう着物きもの悉皆のこらずってった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そういったおおような注文ちゅうもんをする家が多かったのです。要吉は、それをひとつひとつ小さな手帳てちょうにかきつけました。
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
教師きょうし白墨チョーク平素点へいそてん記入きにゅうする手帳てちょうとをって教室きょうしつはいってきました。いままでがやがやといっていました教室きょうしつなかは、きゅうえたように寂然ひっそりとなりました。
残された日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おじいさんはごそごその着物きもののたもとを裏返うらがえしにしてぼろぼろの手帳てちょうを出してそれにはさんだみじかい鉛筆えんぴつを出してキッコの手にたせました。
みじかい木ぺん (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
なんだかすこしやすすぎるので、正直しょうじきかれは、そのままにしておけないがして、公園こうえんのベンチのところでポケットから、手帳てちょう鉛筆えんぴつして計算けいさんをはじめました。
世の中へ出る子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひどい近眼鏡きんがんきょうをかけ、長靴ながぐつをはいた学者がくしゃらしい人が、手帳てちょうに何かせわしそうに書きつけながら、つるはしをふりあげたり、スコップをつかったりしている
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
と、先生せんせいはいって、宮川みやがわせいいてあるところへ手帳てちょう点数てんすうれました。
残された日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
二人はそこにあったもみくしゃの単衣ひとえあせのついたシャツの上にて今日の仕事しごと整理せいりをはじめた。富沢とみざわ色鉛筆いろえんぴつで地図をいろどり直したり、手帳てちょうへ書きんだりした。
泉ある家 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
と、先生せんせいおこったこえでいいつけて手帳てちょうになにかれました。
残された日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
工芸こうげい学校の先生は「黒いしめった土を使つかうこと」と手帳てちょうへ書いてポケットにしまいました。
紫紺染について (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
父がないので母へだけ話したけれども母は心配しんぱいそうにをあげただけで何とも云わなかった。けれどもきっと父はやってくれるだろう。そしたら僕は大きな手帳てちょうへ二さつも書いて来て見せよう。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
私はたいへんいい実験じっけんをした。私はこんなしずかな場所ばしょで遠くから私の考えを人につたえる実験じっけんをしたいとさっき考えていた。お前のった語はみんな私の手帳てちょうにとってある。さあ帰っておやすみ。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)