懇切こんせつ)” の例文
ブラームスを迎えたリストが、その持前の寛容と懇切こんせつで、どんなによくブラームスを遇したかは言うまでもない。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
大富おおとみからのびとと聞いたおまさは手のものをげだしてきた。懇切こんせつに使いの人のろう感謝かんしゃしたうえに、こまごまと死者のうえについての話を聞こうとする。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ニャートンの関所へ掛り、我は日本の仏教徒で仏教修行に来た者であるから入れてくれろといって懇切こんせつに話を
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
やすりかけして、相造すがたづくりが終ると、焼入やきいれにかかった。弟子に教えることは懇切こんせつだった。だが、清人は清人だけの才分しかなかった。何か、気に触れた時である。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
卯平うへい患者くわんじやの一にんでさうしておしないへなやんでた。おしなはゝ懇切こんせつ介抱かいはうからかれすくはれた。かれはどうしても瀕死ひんし女房にようばうかたはら病躯びやうくはこぶことが出來できなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
また吾人ごじんの真情や実況を一通り心得ている友人が懇切こんせつに我々に忠告するときにも、ややもすればこの男がまだまだおれの腹の中を知らんわい、なんと見当違ったことをいうものかと
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
はじめのあひだ日出雄少年ひでをせうねんわたくしたがひかほ見合みあはせてはこの不思議ふしぎなる幸運かううんをよろこび、大佐等たいさら懇切こんせつなる待遇もてなし感謝かんしやしつゝ、いろ/\と物語ものがたつてつたが、何時いつか十數日すうにち以來いらいはげしき疲勞つかれめに
いづれも厚情こうじやう懇切こんせつのお見舞みまひである。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あってみない前の思いほどでなく、お光さんもただ懇切こんせつな身内の人で予も平気なればお光さんも平気であったに、ただ一日お光さんは夫の許しを得て、予らと磯に遊んだ。
紅黄録 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
が、家康は、信雄にたいして、その理由を説明するのに、実に、懇切こんせつ鄭重ていちょうを極めた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このことについては親戚しんせき友人から折々忠告もされたが、しかし非常に行きづまって進退これきわまるときまで、その忠告のいかに懇切こんせつに、いかに穿うがっているかを味わうことができなかった。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
友人というのは、某会社ぼうかいしゃ理事りじ安藤某あんどうぼうという名刺めいしをだして、年ごろ四十五、六、洋服ようふく風采ふうさいどうどうとしたる紳士しんしであった。主人は懇切こんせつおくしょうじて、花前の一しんにつき、いもしかたりもした。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
彼は我々の質問に対し懇切こんせつによく説明してくれたとしゃする。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)