ゆつ)” の例文
兄は、用事があるので、今日はゆつくりしてゐないでぐ帰宅するのだと告げた。帰る途中の円通寺といふ寺まで実枝も同道するのだと云つた。
曠日 (新字旧仮名) / 佐佐木茂索(著)
「うむ、君一人位だつたらうにかならん事もなからう。今日はまあゆつくり遊んでくさ。」
如何いかゞでした? あなた、車ではさぞ御退屈でしたらうねえ。ジョンは、それはゆつくり走らせますから。お寒うございましたでせう、さ、どうぞ火の傍へお出で下さいまし。」
此所こゝにゐると、もう何所どことも交渉かうせふはない。まつた氣樂きらくです。ゆつくりしてらつしやい。實際じつさい正月しやうぐわつふものは豫想外よさうぐわい煩瑣うるさいものですね。わたくし昨日きのふまでほとんどへと/\に降參かうさんさせられました。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
……鶴子がゆつくり顔を挙げた。
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
彼は踏段を下りて、ゆつくりと手探りするやうに草地の方に近よつた。今は何處に彼の大膽な歩みがあらう? やがて彼はどつちに曲つていゝか分らないかのやうに立ち止つた。
其上そのうへ乘客じようきやくがみんな平和へいわかほをして、どれもこれもゆつたりと落付おちついてゐるやうえた。宗助そうすけこしけながら、毎朝まいあさ例刻れいこくさきあらそつてせきうばひながら、まるうち方面はうめんむか自分じぶん運命うんめいかへりみた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
日曜にちえうになつたら、あさはやきてなによりもだい一に奇麗きれい首丈くびたけつかつて見樣みやうと、つねかんがへてゐるが、さてその日曜にちえうると、たまにゆつくりられるのは、今日けふばかりぢやないかとになつて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その石は、ちやうど私とお友達とがゆつくりすわれるほどに、十分廣かつた。