怨靈をんりやう)” の例文
新字:怨霊
彼はいきながら怨靈をんりやうとなれり。その美しき面は毒を吐けり。その表情の力の大いなる、今まで共に嘆きし萬客をしてたちまち又共に怒らしむ。
心得こゝろえことで……はさんではてるへびの、おなじ場所ばしよに、おなじかまくびをもたげるのも、あへて、咒詛じゆそ怨靈をんりやう執念しふねんのためばかりではないことを。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「お前に話したつて仕方がないが、おれは二三日怨靈をんりやうに襲はれてゐるよ。獨りでその事を考へてるとこんが盡きてしまふよ。……かうしちやゐられないと思ふ。」
仮面 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
しかもまなこに恨を宿し、何者をか呪ふがごとき、怨靈をんりやう怪異あやかしなんどのたぐひ……。
修禅寺物語 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
この過去の怨靈をんりやう嘔吐おうとするか
展望 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
あまつさ辿たどむか大良だいらたけ峰裏みねうらは——此方こちらひとりむしほどのくもなきにかゝはらず、巨濤おほなみごとくもみね眞黒まつくろつて、怨靈をんりやう鍬形くはがた差覗さしのぞいてはえるやうな電光いなびかりやまくうつた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あるひしつにのみ、場所ばしよ機會きくわいつてかたちあらはす、ひと怨靈をんりやうならずや。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
夜汽車よぎしやが、芽峠めたうげほたるんで、まどには菖蒲あやめいたのです——ゆめのやうです。………あの老尼らうには、およねさんの守護神まもりがみ——はてな、老人らうじんは、——知事ちじ怨靈をんりやうではなかつたか。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)