心配しんぺい)” の例文
心配しんぺいするな」笑いながら、さっさと足を進めると、なるほど河岸かしッぷちの闇から、チャラリ、チャラリ……と雪踏せったる音。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兼「心配しんぺいしなさんな、そんなけちな旦那じゃアえ、もしか取りに来たら己が喰っちまったというから兄いも喰いねえ、一合買って来るから」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
心配しんぺいする事アえ、先生。齢ア四十一だべえが、村一番の醜婦みたくなし巨女おほをなごだア、加之それにハア、酒を飲めば一升も飲むし、甚麽どんな男も手余てやましにするくれい悪酔語堀ごんぼうほりだで。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「ウハハハハ。何をかすんだ小僧。心配しんぺいしるなって事……おらが引受けるんだ。このかね受合うけおうたら、指一本さしゃしねえかんな。……云う事を聴かねえとコレだぞ」
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「ううん、殺されやあしねえけれど助からなかった、古市の町へ逃げ込んで、大勢に囲まれているんだ、ムクのことも心配しんぺいだが、おめえおいらもこうしちゃあいられねえ」
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「まだごわしねえ、もう出来さうな者だつて此間こねえだ父様とつさまえらく心配しんぺいのうで御座らしやつたけ」
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
此処ここだったのか、んだ心配しんぺいをしたぜ、家へ行って見ると、行灯あんどんけっ放しで空っぽだろう——お隣で聞くと、母親の三七日を済ませて、がっかり気を落したものか、物に憑かれたように
礫心中 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「人のこった、心配しんぺいしなさんな」男はせせら笑った
霜柱 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「亮三郎も、えろう嘆いての、一人の親だのに、夫婦揃って遠くへ来てるばっけえに、親の死目にも、逢うことがでけんというて来ただが、わしが付いとるから、余計な心配しんぺいは、するに及ばんというてやったんじゃ」
仁王門 (新字新仮名) / 橘外男(著)
兼「何だか変だが、兄いが何うかしたぜ、コウ兄い……人にさん/″\心配しんぺいをさせておいて悪体あくていくとアひどいじゃアねえか」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
林「心配しんぺいしねえでもえ、大丈夫だよ、少し理由わけがあるだ、おけくさん、ま一盃えっぺい飲めなせえ、おまえ今日は平日いつもより別段におつこしいように思われるだね」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
知らねえ兄いでもねえに、何うしたんだ、なんか人にしゃくられでもしたのか、えゝ、姉さんが心配しんぺいするから、おい兄い
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
是は親の慾だからお前の事だから間違まちげえはなかんべえが、成たけまアけえれるだらけえってもれえてえだ心配しんぺいだからのう
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
森「旦那がどうしたって心配しんぺいをしていらア、うち間違まちげえたのか、往ったり来たりしている、どうも豊島町の棟梁のようだが、どうしたのかと思っていた」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そんでも怨みもしねえで母様かゝさま大事でいじにする、あんな温順やさしげな人はねえと噂をして居りやんすよ、どうかマア軽躁かるはずみの心を出さなければいと心配しんぺいして居りやんすから
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
婆「それは忰も嫁も心配しんぺえっていますが、他の者じゃアなし、毒な虫をお前様に六百ずつで売って、何ういう事で間違えでも出来やアしねえかと心配しんぺいしてえます」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わしは鹽原角右衞門でございますが、生憎只今高平までめえって居りやせんでござりやしたが、何かマア訳は知りやせんが、忰やわけえもんどもが頻りに心配しんぺいして居りやすが
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
半「旦那お怪我がなくってお目出とう、実に先刻さっきからお怪我をなされはしまいかと心配しんぺいしました」
角「ええ、まア心配しんぺいをぶたねえでも、貴方あんたの実の母様かゝさまは達者でいるから、逢わせてやるべい」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そんな事を聞くと心配しんぺいで成んねえもんだから、少しも能く思わせてえのが親の慾でござらア
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ヘエ行ってめえりました、蔵の方にゃ預かる者があるから心配しんぺいしなえがえ、何時いつでもけえったら直ぐに出すばいて、蔵の下は湿しけるから湿なえたけとこに上げて置くばいといってね
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
早「先刻さっき親父がとけ貴方あんたが金え包んで種々いろ/\厄介になってるからって、別にわしが方へも金をくれたが、そんなに心配しんぺいしねえでもえ、何も金が貰いてえって世話アしたんでねえから」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
森「だ本当の祝儀をしねえから何処どこへも知らせねえのだ、大丈夫だ、心配しんぺいしなくもよろしい、祝いものは何処からも来やしねえ、表向おもてむきに婚礼をすりゃアおめえの所へも知らせらア」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
加減して居ちゃアあらわれるから本当にぴしゃ/\思い切って殴ったが、小兼は定めし苦しかったろう、まア夫婦のものが斯う遣って心配しんぺいして、旦那にお怪我をさせめえとおもってねえ
アレマアわれさえ云わなければ知れる気遣きづけえはねえ、われが心配しんぺいだというもんだから、お前さまの前へ隠していたんだ、夫婦の情合じょうあいだから、云ったらおめえあんまり心持もくあんめえと思ったゞが
重「国を出た切りけえらねえから心配しんぺいして来たのだよ」
森「心配しんぺいはねえ、旦那が来たから」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)