御目おんめ)” の例文
「大塔宮様の御目おんめにかかり、許すとのお言葉うけたまわるまでは、死なぬぞ死なぬぞ! 死なぬぞ死なぬぞ!」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
遠くの掛軸かけじくを指し、高いところの仏体を示すのは、とにかく、目前に近々ちかぢかと拝まるる、観音勢至かんおんせいし金像きんぞうを説明すると言って、御目おんめ、眉の前へ、今にも触れそうに
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何の因縁いんねんにてか、再びかかる処にて御目おんめにはかかりたるぞ、これも良人おっとや小供の引き合せにて私の罪をいさせ、あなた様に先年の御礼おんれいを申し上げよとの事ならん。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
御目おんめにかかるは今がはじめて。これは大内平太へいだとて元は北畠の手の者じゃ。秩父刀禰とはかねてより陣中でしたしゅうした甲斐に、申し残されたことがあって……」
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
ひさし御目おんめもじ致さず候中さふらふうちに、別の人のやうにすべ御変おんかは被成なされ候も、わたくしにはなにとやら悲く、又ことに御顔のやつれ、御血色の悪さも一方ひとかたならず被為居候ゐらせられさふらふは、如何いかなる御疾おんわづらひに候や
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
書きながすはかなき歌もきよらなる御目おんめに入るをほこりとぞせし
大塚楠緒子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
かく語りし時、の君の御目おんめにも光る露の見え申しさふらふ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
若葉して御目おんめしづくぬぐはゞや 芭蕉
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
もはや最後も遠からず覚えそうろうまま一筆ひとふで残しあげ参らせ候 今生こんじょうにては御目おんめもじのふしもなきことと存じおり候ところ天の御憐おんあわれみにて先日は不慮のおん目もじ申しあげうれしくうれしくしかし汽車の内のこととて何も心に任せ申さず誠に誠におん残り多く存じ上げ参らせ候
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
然樣に御座候と答ふるにらば御主人仁左衞門殿へ御目おんめかゝりたしおほせ入られ下さるべしと言入しかば仁左衞門何心なく立出たちいでるに以前の三吉なればわるやつが來りしと思へども詮方せんかたなく先一間へ連行其方は何故たづね來りしやと申に三吉は面目めんぼく無氣なげに私し事する事なす事手違ひになりて誠に難澁仕つり今は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「はて、面妖めんような。只事ただごとでない。」と家令を先に敷居越し、恐る恐るふすまを開きて、御容顔を見奉れば、徹夜の御目おんめ落窪おちくぼみて、御衣服おめしものは泥まぶれ、激しき御怒おいかりの気色あらわれたり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
十年越し思ひに思ひまゐらせ候事何一つも口には出ず、あれまでには様々の覚悟も致し、また心苦こころぐるし御目おんめもじの恥をも忍び、女の身にてはやうやうの思にて参じ候効さふらふかひも無く
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
背に腹はえられず、つい道ならぬ欲に迷いしために、たちま覿面てきめん天罰てんばつ受けて、かくも見苦しき有様となり、御目おんめにかかりしことの恥かしさよと、生体しょうたいなきまで泣き沈み、御恵おんめぐみにあずかりし時は
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
さまざまにあきら申候まをしさふらへども、此の一事はとても思絶ち難く候へば、わたくし相果あひは候迄さふらふまでには是非々々一度、如何に致候てもして御目おんめもじ相願ひ可申まをすべくと、此頃は唯其事ただそのことのみ一心に考居かんがへを申候まをしさふらふ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
御目おんめを赤くそめたまえば、老婆も貰泣もらいなきする処へ、三吉会釈も無くずッと入り
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)