御事おんこと)” の例文
『お殿様御事おんこと年来御放蕩の結果お鼻御落滅。同時に御失明のおそれ有之候間片時へんじも早う眼科へ転学可然しかるべく』とありました。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
さてとや、この、J・I・C結社の性質と申しますのは、最早、御承知の御事おんこととは存じますが、当座の申開きのため、あらましを申述べさして頂きます。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
村上彦四郎義光よしてるは、大手の勢に加わって、悪戦苦闘をつづけていたが、敵搦め手から寄せたと聞き、宮家の御事おんこと心もとなく、蔵王堂まで引き返して来た。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私事むなしく相成候とも、決しての病にては無之これなく御前様おんまへさま御事おんこと思死おもひじに死候しにさふらふものと、何卒なにとぞ々々御愍おんあはれ被下くだされ其段そのだんはゆめゆめいつはりにては無御座ござなく、みづから堅く信じ居候事に御座候。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「さきに自分が勧進かんじんした、やわたの八幡宮の造営も、予算三百貫というのが千貫をこえた。このたびはわけても伊勢の御事おんこと、三倍はおろか数倍も要ろう。御費用を切りつめるな」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
エート東京へんは追々暖気に向いそうらえども御地おんちはいまだ寒さはげし御事おんこと存候処ぞんじそろところ御両親様始め御本家の伯父上伯母上お代どのまで御一同御無事に御暮おんくら被遊候由あそばされそろよし何よりの御事と奉賀候がしたてまつりそろ
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
それがしは当時退隠たいいん相願い、隈本くまもとを引払い、当地へ罷越まかりこし候えども、六丸殿の御事おんこと心にかり、せめては御元服げんぷく遊ばされ候まで、よそながら御安泰を祈念きねん致したく、不識不知しらずしらずあまたの幾月を相過あいすごし候。
村「…益々御機嫌よく御暮おくら被成候なされそうろう御事おんこと蔭ながら御嬉おんうれしく存じあげ※」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
大摩申しけるは、事やう/\勿体もったいなき御事おんこと也。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
受出さんとの御事おんこと承知仕つり候へ共一品にても拔差ぬきさしは手前にて迷惑めいわくに候間殘らず御受なさるゝなら格別かくべつ其方そなたの勝手に大小ばかり請樣うけやうなどと仰られても其儀は出來申さずと云ければ文右衞門きゝて夫は御道理ごもつともの事なり今殘らず請出すあひだ元利ぐわんり何程なにほどか勘定して下されといふゆゑ番頭久兵衞は飽迄あくまで見込みこみちがひになりしかば心の中にては
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
時下じか残暑ざんしょしのぎがたく候処そうろうところ益〻ますます御清穆ごせいぼく御事おんこと存上候ぞんじあげそうろう 却説さて 伯爵様はくしゃくさま折入おりいって直々じきじき貴殿きでん御意得度思召ぎょいえたきおぼしめし被在候間あらせられそうろうあいだ明朝みょうちょう御本邸ごほんてい御出仕可然ごしゅっししかるべく此段申進候このだんもうしすすめそうろう 早々そうそう頓首とんしゅ
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
毎日のやうに御出おんい被成候なされさふらふて、御前様の御世話おんせわ万事被遊候あそばされさふらふ御方おんかたよしに候へば、後にて御前様さぞさぞ御大抵ならず御迷惑被遊候あそばされさふらふ御事おんことと、山々御察おんさつし申上候へども、一向さやうに御内合おんうちあひとも存ぜず
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
この時、率然と宮家の御心みこころへ、父みかど御事おんことが思いいでられた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「宮、ご壮健であらせられ、何よりの御事おんことに存じ上げまする」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
もちろんご承知の御事おんことと存ずる。
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)