彼者かのもの)” の例文
ふ寶澤こたへて我は徳川無名丸むめいまると申す者なり繼母けいぼ讒言ざんげんにより斯は獨旅ひとりたびを致す者なり又其もとは何人にやとたづかへせば彼者かのもの芝原しばはらへ手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かくて直ちに清兵衛が嫡子を召され、御前においてさかずきを申付けられ、某は彼者かのものと互に意趣を存ずまじきむね誓言せいごんいたし候。
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
一時餘いつときあまりちぬれどもでよとはのたまはず、はただしたまふべき樣子やうすもなし。彼者かのもの堪兼たまりかねて、「最早もはや御出おだくださるべし、御慈悲ごじひさふらふ」とたてまつる。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「いや、ただいまのさわぎ……彼者かのものは、貴殿にこの書面を捻じこんでいったに相違ござるまいと存ずる。なに、これはただ拙者の推量だが、はははは、いかがでござるな?」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
これも皆彼者かのもの智慧ちえありしゆえなればと、彼大臣を呼びいだして恩賞の沙汰さたありけるに、この御恩賞としては願はくは臣が罪をゆるしたまへ、実は臣国法を破りて老いたる父を棄てざりしが
印度の古話 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
かくて直ちに相役の嫡子ちゃくしを召され、御前において盃を申つけられ、それがし彼者かのものと互に意趣をぞんずまじきむね誓言致し候。
彼者かのもの迷惑めいわくして、「つひに獻立こんだてつかまつりたるおぼえござなく、其道そのみちいさゝか心得候こゝろえさふらはねば、不調法ぶてうはふさふらふ此儀このぎ何卒なにとぞ餘人よじん御申下おんまをしくださるべし」とこうじたるさまなりけり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今時分通らるゝやと申ければ彼者かのものは左仲が樣子は晝の中よりとくと見濟し又左仲が懷中くわいちう金子きんすのある事も知りたればかくあとより尾來つけきたりし故今左仲が申を聞て大いに笑ひ御身はぞくひ夫を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
掛くれば彼者かのもの自若じじやくとして予は大納言殿の三なん徳太郎信房のぶふさなり慮外りよぐわいすな此提灯このちやうちんあふひもんは其方どもの目に見えぬかと悠然いうぜんたる形容ありさまに與力は手荒てあらにすべからずと云付いひつけられたれば詮方せんかたなく立歸り奉行ぶぎやう大岡忠右衞門に此趣このおもむきを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)