彫刻ちょうこく)” の例文
「しごとをするといって、こいつは、いったい、どんなしごとをするんだろう。のんきらしく、彫刻ちょうこくでもはじめるつもりだろうか?」
魔法人形 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そして、店先みせさきって、なるほど、たくさんいろいろな仏像ぶつぞうや、彫刻ちょうこくがあるものだと、一ひととおかざられてあるものにとおしたのです。
天下一品 (新字新仮名) / 小川未明(著)
この人をモデルにして不満足ふまんぞくというだいなり彫刻ちょうこくなり作ったならばと思われる。ふたりはしばらくのあいだ口もきかなかった。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
それで古来木理の無いような、ねばりの多い材、白檀びゃくだん赤檀しゃくだんの類を用いて彫刻ちょうこくするが、また特に杉檜すぎひのきの類、とうの進みの早いものを用いることもする。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
希臘ギリシャ彫刻ちょうこくで見た、ある姿態ポーゼーのように、髪を後ざまにれ、白蝋はくろうのように白い手を、後へ真直まっすぐらしながら、石段を引ずり上げられる屍体は、確に悲壮ひそう見物みものであった。
死者を嗤う (新字新仮名) / 菊池寛(著)
しかし、ニールスには、これらの教会が、むかしはどんなふうだったか、想像そうぞうしてみることができました。壁には彫刻ちょうこくがほどこされ、絵がかざりつけられていたことでしょう。
そして絵だの彫刻ちょうこくだの建築だのと違って、とにかく、生きものという生命を材料にして、恍惚こうこつとした美麗びれいな創造を水の中へ生み出そうとする事はいかに素晴すばらしい芸術的な神技であろう
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
また鶯は人の見ている前では啼かないかご飼桶こおけというきりの箱に入れ障子しょうじめて密閉し紙の外からほんのり明りがさすようにするこの飼桶の障子には紫檀したん黒檀などを用いて精巧せいこう彫刻ちょうこく
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
およいで行くことができたら一つの峯から次のいわへずいぶん雑作ぞうさもなく行けるのだが私はやっぱりこの意地悪いじわるい大きな彫刻ちょうこく表面ひょうめん沿ってけわしい処ではからだがえるようになり少しのたいらなところではほっといき
マグノリアの木 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
お宮の扉の上にある象鼻ぞうはな獅子頭ししのあたま彫刻ちょうこく、それから宮の中のかしりの鳩やにわとりなども、昔手をふれたままなのがたまらなくなつかしい。
落穂 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
くにからってきて、アトリエのかべにかけてあったマンドリンをって、十七、八のみすぼらしいふうをした田舎娘いなかむすめが、それをらしながら、自分じぶん製作せいさくした彫刻ちょうこくまえって
愛は不思議なもの (新字新仮名) / 小川未明(著)
そこの壁は、美しい彫刻ちょうこくがほどこされていて、一つ一つの名も、みんなとくべつにかざりをつけられています。そして、その開いた門から見えるすばらしさには、ただ、ただ驚くばかりでした。
そして、とり性質せいしつについて若者わかものおしえましたから、若者わかものは、人間にんげんや、自然しぜん彫刻ちょうこくしたり、またえがいたりしましたが、とり姿すがたをいちばんよく技術ぎじゅつあらわすことができたのであります。
あほう鳥の鳴く日 (新字新仮名) / 小川未明(著)