小間物屋こまものや)” の例文
そしてじぶんの顔を黒くぬって、年よりの小間物屋こまものやのような着物きものをきて、だれにも女王さまとは思えないようになってしまいました。
それから横浜よこはま近江屋おうみや——西洋小間物屋こまものやの近江屋が来たら、きょうこっちから出かけたからっていうようにってね
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
それだからあやまつたとふぢやないかサア多舌しやべつるうちに小間物屋こまものやのまへはとほりこして仕舞しまつた。あらマアどうしませうねへさきにもありますから。
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
家の人たちは何度なんども、雑貨屋ざっかや小間物屋こまものやなどの小さな店をってやって、そこにおちつくようにすすめたことがあった。しかしかれこしをすえることが出来なかった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
そのつかいものが、衣服の時があり、手道具の時があり、しとねの時があり、種々さまざまであるけれども、使いは同じ人にさせているということを、女小間物屋こまものやさんは語った。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
四角へ出ると、左手のこちら側に西洋小間物屋こまものやがあって、向こう側に日本小間物屋がある。そのあいだを電車がぐるっと曲がって、非常な勢いで通る。ベルがちんちんちんちんいう。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
麹町通こうじまちどおりの小間物屋こまものやには今日こんにちうしべにのビラがけられて、キルクの草履ぞうり穿いた山の手の女たちが驕慢きょうまんな態度で店の前に突っ立ちます。ここらの女の白粉おしろいは格別に濃いのが眼に着きます。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
檢査あらためて書付などよまれ何か心に合點うなづき仔細しさいあれ追々おひ/\吟味ぎんみに及ぶとて一同下られ小間物屋こまものや町内ちやうないあづけ吉三郎旅僧は入牢申付られけりさて翌日よくじつ大岡殿吉三郎を呼出し其の方彌々いよ/\菊と密通みつつういたしてくしかんざし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
... 持ってって悦ばれるか訳が分らん。困りましたね」書生「では僕らがちょいと小間物屋こまものやへ走って良いのを一つ買ってげましょうか」大原「どうぞそうして下さい」と妙な処に援兵あり。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
しょうは、これがうしと一しょうのおわかれであることもわすれてしまって、なにか子供こどもらに土産みやげっていってやろうとおもいました。それで、小間物屋こまものやはいって、らっぱに、ふえにおうまに、太鼓たいこいました。
百姓の夢 (新字新仮名) / 小川未明(著)
水の汚い小川にかゝつた土橋どばしの上に立つて、小池が來た方を振り返へると、お光の姿が見えなくなつてゐたので、後戻あともどりして探さうとすると、お光は町はづれの小間物屋こまものやに荒物屋を兼ねたやうな店から
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「おじょうさんには、よくにあうことでしょう。さあ、わたしがひとつよくむすんであげましょう。」と、年よりの小間物屋こまものやはいいました。
見つめておかしさよりもいぶかしさに堪えず「大原さん、この半襟は貴君あなた小間物屋こまものやってお買いのですか」大原さてこそと大得意「イヤ、人に頼んで買ってもらったのですが渋いでしょう、この頃の新流行でしょう、随分珍らしいでしょう」
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)