寝台しんだい)” の例文
旧字:寢臺
このわるものの女は、おきさきさまの頭をつかみ、むすめには足をつかませて、ふたりがかりでお妃さまを寝台しんだいからひきずりだしました。
今夜、わたしは、その最後の一幕ひとまくを見たのです。そのせまい小路で、その女は死のやまいにとりつかれて、寝台しんだいの上に横になっていました。
玉太郎は、そばへかけよると自分の寝台しんだいの下からポチが見えなくなって、どこやらで、いやなほえ方をしていることを手みじかに語った。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かわがわるさまざまの色の電光が射し込んで、床にかれた石膏せっこうぞうや黒い寝台しんだいや引っくりかえった卓子テーブルやらを照らしました。
ガドルフの百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
アメリカのことでたたみがないから、寝台しんだいに使うわらぶとんのようなものを室いっぱいにいて、毎日柔道を教えていた。
柔道と拳闘の転がり試合 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
自分達は仕切りの付いている寝台しんだいをやっとの思いで四つ買った。四つで一室になっているので都合は大変好かった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は白い寝台しんだいの上に朦朧もうろうとした目を開いたまま、蒙古もうこの春を運んで来る黄沙こうさすさまじさを眺めたりしていた。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ひとりは長いすに、ひとりは寝台しんだいに、九歳や十歳になる幼年たちは、ただ恐怖きょうふのあまりに、たがいにだきあってふるえている。富士男はそれを見ていっそう勇気を感じた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
藤の花蔭に長い籐椅子につて居る白衣の独逸ドイツ婦人などを美しく思つて過ぎた。伯林ベルリンへ着く前に私は寝台しんだいを作らせて寝た。十九日の朝仏蘭西フランスの国境で汽車賃を十円追加された。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
元来禁欲そうじみた風貌ふうぼうの彼にはよく似合うりたての頭をして、寝台しんだいにどっかと胡坐あぐらをかき、これも丸坊主の村川と、しきりに大声で笑いあって、なにかうれしそうに話をしていました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
テン太郎さん 寝台しんだいから落つこちたりして
みなが不平ふへいをぶちまけ寝台しんだいうえ
かぼちゃも、きゅうりも、いねも昔の三等寝台しんだいのように、何段もかさなったたなの上にうえられていた。みんなよく育っていた。
三十年後の東京 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのとき、寝台しんだいのまわりの花模様のついているサラサのカーテンが動いて、そこから子供の顔が外をのぞくのが見えました。
「ひとを寝台しんだいからひきずりおろして、川のなかへほうりこむような人間は、どんなめにあわせたらよかろう。」
その時はちょうど一時半、オツベルは皮の寝台しんだいの上でひるねのさかりで、からすゆめを見ていたもんだ。
オツベルと象 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
寝台しんだい西洋㡡せいようがや、洗面台、——今はすべてが昼のような光の中に、嬉しいほどはっきり浮き上っている。その上それが何一つ、彼女が陳と結婚した一年以前と変っていない。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
乗客じようかく係が来て莫斯科モスコオから連絡する巴里パリイ迄の二等車の寝台しんだいが売切れたから一等ばかりのノオルド・エキスプレスに乗つてはうかと云つた。八十円増して出せばいと云ふのである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
彼は手をたたいて、下女を呼んで今夜の急行列車の寝台しんだいを注文した。それから時計を出して、食事を済ましたあと、時間にどのくらい余裕があるかを見た。窮屈にれない二人はやがてごろりと横になった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
幼年組がコソコソ寝台しんだいからぬけだした。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
中央に貴人きじん寝台しんだいがあり、あおい顔をした貴人が今や息を引取ろうとしていると、その周囲にきらびやかな僧衣に身を固めた青鬼赤鬼およそ十四五匹が
鬼仏洞事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
すると、カモはおきさきさまのすがたになって、あがっていきました。そして、ぼうやにおちちをのませ、小さな寝台しんだいをゆすって、ふとんをよくかけてやりました。
心細い話だと思つて私は考へたが、二等の寝台しんだい車を待つために幾日いくか莫斯科モスコオに滞在せねば成らぬか知れない様な事も堪へられないと思つて、結局仏貨で三十九円六十銭出してノオルドの寝台しんだい券を買つた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
と思うとすぐに寝台しんだいの上へも、誰かが静にあがったようであった。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
飛び越されるときに、なおもハッキリ下から見上げましたが、その怪しい人間は、寝台しんだいの上に乗ったように身体が横になっていました。手足はじっとしています。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
洗面せんめんだらいは、こなごなにこわれていました。夜着よぎもまくらも、寝台しんだいからころげおちていました。
部屋の寝台しんだいは、片隅に押しつけられ、床には棒をさし込んで、ぐいぐい引張ったらしいあともあり、スパンナーやネジまわしや、アセチレン瓦斯ガス焼切道具やききりどうぐなどが散らばっていた。
なかへはいってみれば、つくえも、いすも、こしかけも、ひっくりかえっています。せんたくだらいはめちゃめちゃにこわれていますし、かけぶとんもまくらも、寝台しんだいからずりおちています。
大きな方眼紙ほうがんしがのべられ、そのそばには、さきをとがらせた製図鉛筆が三本、置かれてあったが、午後九時、彼が寝台しんだいへ立つまでに、その方眼紙のうえには、一本の線も引かれはしなかった。
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
私はなんだか身体中がムズムズするほど嬉しくなって、寝台しんだいについたけれど、一向ねむれそうもなかった。とうとう給仕を起して、シャンパンを冷やして持って来させると、独酌どくしゃくでグイグイひっかけた。
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)