寄合よりあい)” の例文
梅原頼母たのもは五百三十石の寄合よりあい肝入きもいりで、小池帯刀の上役に当るが、隼人の口上にはいちおう反対し、こちらは待ってもよいと云った。
ちくしょう谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
おりおり寄合よりあいがあり、扱った珍しい患者とか、その変った容態などを代る代る話合うことになりましたが、父はそれを非常に苦にして
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
本当ほんとさぞ御不自由でございましょうねえ、みんな気の附かない者ばかりの寄合よりあいなんですから。どうぞ何なりと御遠慮なく仰有おっしゃって下さいまし。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
在るものはこうまち/\ですが、全体としては、家の中の所々からこの部屋一ところに追い集められたにわか寄合よりあいの席の態に見受けられました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ふと醒めると、何処かで騒がしい人声がかすかに聞える。すぐ門弟たちの寄合よりあいだと分った。明け方のことが、それと共に、頭にはっとよみがえった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その頃、京橋の築地、かの本願寺のそばに浅井因幡守いなばのかみという旗本屋敷がありました。三千石の寄合よりあいで、まず歴々の身分です。
なに力業ちからわざじゃないから、誰でもできる仕事だが、知っての通りみんな無筆の寄合よりあいだからね。君がやってくれるとこっちも大変便利だが、どうだい帳附は
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ある日、村の寄合よりあいの席で、村のかしらがもう別に何もいうことはないか、と一座を見まわした時に、何と思ったか子供のキーシュがぬっと立ちあがりました。
負けない少年 (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
それでまず試みに四五人の仲間の寄合よりあいの席で、どんな印象を与えるかと思ってこの話をして見た所が、早速にまた新たなる知識を一つ添えることが出来た。
抱沖はその子春沂しゅんきで、百俵寄合よりあい医師から出て父の職をぎ、家は初め下谷したや二長町にちょうまち、後日本橋にほんばし榑正町くれまさちょうにあった。名は尚真しょうしんである。春沂ののち春澳しゅんいく、名は尚絅しょうけいいだ。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
金森家の家督は、弟の武九郎靭負たけくろうゆきえが継ぎ、後に千五百俵を食んで寄合よりあいに列したと伝えてあります。
寄合よりあい加藤伊予守いよのかみの家来で、下谷いけはたなるその邸内に住し、儒学と支那小説の講義をしていた。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
奇人連中の寄合よりあいですから、その頃随分面白い遊びをやったもので、山門で茶の湯をやったり、志道軒しどうけんの持っていた木製の男根が伝っていたものですから、志道軒のやったように
いずれも情歌の作品には情緒纏綿てんめんという連中だったが、茶屋酒どころか、いかがわしい場所へ足を入れるものはほとんすくなかった。この点、庵主金升もその主義だった。正にめずらしい寄合よりあいといえる。
昌平橋のこっちに海坊主の寄合よりあいのようにかたまって、その乗物にちっとも眼を離さなかった連中が、今や前後の乗物が別れたと見るとスーッと爪先立つまさきだって橋を渡り、太刀のつかを握り締めた十余人は
一 他人と寄合よりあいの時或は時間ときの定ある時は必ず守るべし
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
願ってもない寄合よりあいですね。4295
河本家は四百石の大寄合よりあいであるが、宗兵衛は三年まえから町奉行ぶぎょうを勤めている。としは直衛と同じ三十二歳、妻のほかに二人の子があった。
改訂御定法 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
これで、この日の寄合よりあいは終ったかたちだった。——と見てから、立会いに来ていた持明院派の公卿たち九名は、すぐ席を立って、先に帰った。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
曙町の様子などを聞かれましたので、二本杉のお話をしましたら、「それは天狗てんぐ寄合よりあいによい処ですね」といわれました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
彼をつぎのかしらにしようという話さえ起って来ました。こうなってみると、皆は彼がまた寄合よりあいに出てくれればよいと思うようになりました。しかし彼はどうしても出て来ません。
負けない少年 (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
黐木坂下もちのきざかしたに鍋島穎之助えいのすけという五千石の寄合よりあいが住んでいたから、定めてその邸であろう。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
其間そのあいだ別に変った事も無かったが、一旦山𤢖と親しんだという風説が、甚だ青年わかものわざわいして、彼は附近の人々から爪弾つまはじきされた。若い者の寄合よりあいにも重蔵一人は殆ど除外のけものとなってしまった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
文壇や美術界を見ても、真面目な批評は一つも見られなくて、人の噂ばかりしかしていない。してみると日本の文壇画壇などというものは、まず長屋のかかあ寄合よりあいと同様に看做みなすべきものだ。
独居雑感 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
おしいかな今の日本の文芸家は、時間からいっても、金銭からいっても、また精神からいっても、同類保存の途を講ずる余裕さえ持ち得ぬほどに貧弱なる孤立者またはイゴイストの寄合よりあいである。
文芸委員は何をするか (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「実は、今夜の寄合よりあいまでに、よく居所を突き止める事ができなかったんです。根岸の屋敷を出たのち、御府外へ向ッた事だけは分っておりますが」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
次に寛政三年六月四日に、寄合よりあい戸田政五郎とだまさごろう家来納戸役なんどやく金七両十二人扶持川崎丈助かわさきじょうすけむすめを迎えたが、これは四年二月にいつというむすめを生んで、逸が三歳で夭折ようせつした翌年、七年二月十九日に離別せられた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
夜はふくろうねぐらです。小出氏が、どんな処か、といわれた時にその話をしましたら、天狗の寄合よりあいに好い場所ですね、といわれました。光子さんにその話をしましたら、また先生の例の癖、と笑われました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
「ここ博多の探題所は、英時どの滅亡のあと、大友、島津、少弐しょうにの三家が寄合よりあいにて、九州の国事をて来たというが」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今日の寄合よりあい通牒つうちょうも出してあるのに、その席へは顔を出さないで、ここに来て長々と待っていることもせない。その他、鎌倉の連判以来、彼はどうかしている。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうか、それは好くやッてくれた。今日の寄合よりあいはこの頭数で充分だ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「然らば、いずれまた後刻、寄合よりあいの席にてかかる」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「じゃあ、今夜の寄合よりあいはこれで済んだな」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)