奸臣かんしん)” の例文
張昺部下にして内通せる李友直りゆうちょく布政司ふせいし参議さんぎし、すなわち令を下して諭して曰く、予は太祖高皇帝の子なり、今奸臣かんしんの為に謀害せらる。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
理由は、刺殺された四人は殿さまに放蕩ほうとうをすすめ、それがもとで御逼塞という大事にいたらしめた奸臣かんしんだから、というのである。殿を誤らせた奸物。
其背後には支那の歴史に夷狄いてきに対して和親を議するのは奸臣かんしんだと云ふことが書いてあるのが、心理上に réminiscence として作用した。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
この術は決して新しいものではなくて、古い古い昔から、時には偉大なる王者や聖賢により、時にはさらにより多く奸臣かんしんの扇動者によって利用されて来たものである。
錯覚数題 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
かん高祖こうそ丁公ていこうりくし、しん康煕こうき帝がみん末の遺臣いしん擯斥ひんせきし、日本にては織田信長おだのぶなが武田勝頼たけだかつより奸臣かんしん、すなわちその主人を織田に売らんとしたる小山田義国おやまだよしくにはいちゅう
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
いなとよ君。それは常識の解釈というもの。よく忠臣の言を入れ、奸臣かんしんざんをみやぶるほどなご主君なら、こんな大敗は求めない。おそらく田豊の死は近きにあろう」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
忍びたる不忠ふちう不義ふぎ曲者くせものなり又汝等が兄喜内は善惡ぜんあく邪正じやしやうわかちなくしたしきを愛しうときをにくまことに國をみだすの奸臣かんしんなる故我うち取て立退たちのきしを汝等は愚昧ぐまいなれば是をさとらず我を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
館の老臣でありながら、木曽家にとっては讐敵しゅうてきの、高遠の管領かんりょう伊那盛常もりつねひそかに好誼よしみを通ずるさえあるに、殿を夜な夜なおびき出して、惰弱だじゃくを教える奸臣かんしんが、お館の中にあるからじゃ
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
つまり忠臣をい出して奸臣かんしんを取り巻きにして、太平楽を歌った訳だね。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
おまえは一部の奸臣かんしんはかって、兄、成武をさし越し、自分が家督になおろうと企だてた、この事実はわが家法の重過であって、とうていゆるすわけにゆかない。
泥棒と若殿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
その御方をめぐって天日をくろうしている奸臣かんしん佞吏ねいり、世をおおう悪政の魔魅まみどもが敵であるだけです。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
王こゝにおいて杖を投じてって曰く、我何ぞ病まん、奸臣かんしんに迫らるゝのみ、とて遂に昺貴等をる。昺貴等の将士、二人が時を移してかえらざるを見、はじめは疑い、のちさとりて、おのおの散じ去る。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
いや瓜二つどころかむしろ伝吉その者と云っても差支さしつかえござらぬ、なぞは解け申した、五十塚はじめ一味の奸臣かんしんどもは、不敵にも「若殿すり替え」をやってのけたのでござる。
若殿女難記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
朝廷おかみはでたらめ。政閣は奸臣かんしんの巣。ここら薊州けいしゅうあたりの安軍人までが、あんなざまじゃございませんか。私みたいな凡くらでさえ、何クソっていう気が底にありますからね」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかるに奸臣かんしん斉泰せいたい黄子澄こうしちょう、禍心を包蔵し、しゅくはくけいべんの五弟、数年ならずして、並びに削奪さくだつせられぬ、はくもっともあわれむべし、闔室こうしつみずからく、聖仁かみに在り、なんなんこれに忍ばん。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)