はさ)” の例文
ここおいせいぐんものをして、(五三)萬弩ばんどみちはさんでふくせしめ、(五四)していはく、『くれがるをともはつせよ』
など戯れつつ力餅の力をりて上ること一里余杉もみの大木道をはさみ元箱根の一村目の下に見えて秋さびたるけしき仙源に入りたるが如し。
旅の旅の旅 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
なお妾と互い違いにして妾の両足りょうそくをば自分の両腋下えきかはさみ、如何いかなる寒気かんきもこのすきに入ることなからしめたる、その真心の有りがたさ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
……中に人の数をはさんだばかり、つい同じ車に居るものを、一年ひととせ、半年、立続けに、こんがらかった苦労でもした中のように種々いろいろな事を思う。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
支那で古く蛟と呼んだは『呂覧』に、佽飛しひ宝剣を得て江を渉る時二蛟その船をはさめぐったので、飛江に入って蛟を刺し殺す。
そもそも塩原の地形たる、塩谷郡しほやごほりの南より群峰の間を分けて深く西北にり、綿々として箒川ははきがわの流にさかのぼ片岨かたそばの、四里にわかれ、十一里にわたりて、到る処巉巌ざんがんの水をはさまざる無きは
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
璧をちて河を渡りける時、河の神の、璧を得まくおもふより波を起し、みづちをして舟をはさましめおどし求むるに遇ひしが、吾は義を以て求むべし、威を以ておびやかすべからずとて
花のいろ/\ (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
己酉つちのととり(二十八日)……さらに日本やまと乱伍らんご中軍ちゅうぐんの卒を率いて進みて大唐の軍をつ。大唐、便すなわち左右より船をはさみてめぐり戦う。須臾とき官軍みいくさ敗績やぶれぬ。水におもむきて溺死しぬる者おおし。
金将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
以テ日ヲ消スルノ具ニ供ス。尾濃ノ間騒人緇流しりゅうソノ高風ヲ慕ヒ遊ブ者常ニ数十人。経ヲ抱ヘ策ヲはさミ益ヲ請フ者マタ日ニむらがリ至ル。居ルコト数年たまたま尾公学校ヲ起シ以テ賢者ヲ招ク。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
河原にはよもぎすなの中に埋まって生えている、大さな石から石には、漂木がはさまって、頭を支え、足を延ばし、自然の丸木橋になっているところを、私たちは上ったり下りたりした
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
七葉樹の木立ちで葉影の美しく画かれたテイブルをはさんでワインをくむ、ニーセンの空には、真っ白な真夏の雲がむくむく湧いて、刻々に湖の上へ拡がって来る、風もない水の面は
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
唐の張鷟ちょうさくの『朝野僉載ちょうやせんさい』に、嶺南の獠民、鼠の児目明かず、全身赤くうごめくものに、蜜を飼い、はしはさみ、取って咬むと喞々しつじつの声をなす、これを蜜喞みつしつといいて賞翫するとあり。
去年この紀行が『二六新報』に出た時は炎天の候であって、余は病牀にあって病気と暑さとのはさみ撃ちに遇うてただ煩悶を極めて居る時であったが、毎日この紀行を読む事は楽しみの一つであった。
徒歩旅行を読む (新字新仮名) / 正岡子規(著)
クレヴァースをはさんで、右に二人、左側に三人、なかには爪立つばかりに氷の端をつかんで立ってるのもあり、しゃがんでいるのはクレヴァースにのめる様で、一人はその肩につかまって延び上りながら
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
〈卜しおわりて手を拱いて曰く、恭喜すこれ個の卵をはさむもの、その人甚だ喜び、いわく男子たること疑いなし、産するに及びてかえってこれ一女なり、因って往きてこれを咎む、卜者曰く