大石たいせき)” の例文
藤木川ふぢきがはの岸を徘徊はいくわいすれば、孟宗まうそうは黄に、梅花ばいくわは白く、春風しゆんぷうほとんおもてを吹くが如し。たまたま路傍の大石たいせきに一匹のはへのとまれるあり。
病中雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「それぢや一と風呂浴びて來るが、——その間によく考へて置くが宜い。その大石たいせきはどう考へたところでいきはあるまいが」
そこには、たちまち矢叫やさけび、吶喊とっかんこえ大木たいぼく大石たいせきを投げおとす音などが、ものすさまじく震撼しんかんしだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
用意よういをはればたゞちにはしりて、一本榎いつぽんえのきうろより數十條すうじふでうくちなはとらきたり、投込なげこむと同時どうじ緻密こまかなるざるおほひ、うへにはひし大石たいせきき、枯草こさうふすべて、したより爆※ぱツ/\けば
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
駈寄かけよる岸の柳をくぐりて、水は深きか、宮は何処いづこに、とむぐらの露に踏滑ふみすべる身をあやふくもふちに臨めば、鞺鞳どうとうそそぐ早瀬の水は、おどろなみたいつくし、乱るる流のぶんいて、眼下に幾個の怪き大石たいせき
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
わが罪を隠そうが為に、土手の甚藏をあざむいて根本の聖天山の谷へ突落つきおとし、上から大石たいせきを突転がしましたから、もう甚藏の助かる気遣きづかいは無いと安心して、二人差向いで、堤下どてした新家しんやで一口飲んで
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「言つたよ、待つたなしと言つたに相違ないが、其處を切られちや、此大石たいせきが皆んな死ぬぢやないか。親分子分の間柄だ、そんな因業いんごふなことを言はずに、ちよいと此石を待つてくれ」
彼は壑間たにまの宮を尋ぬる時、この大石たいせきを眼下に窺ひ見たりしを忘れざるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
せんのすえに青々とすんだ浪華なにわの海には、山陰さんいん山陽さんよう東山とうさんの国々から、寄進きしん巨材きょざい大石たいせきをつみこんでくる大名だいみょうの千ごくぶねが、おのおの舳先へさき紋所もんどころはたをたてならべ、満帆まんぱんに風をはらんで
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「言ったよ、待ったなしと言ったに相違ないが、そこを切られちゃ、この大石たいせきがみんな死ぬじゃないか。親分子分の間柄だ、そんな因業いんごうなことを言わずに、ちょいとこの石を待ってくれ」
「ほウ、またきょうも、だいぶ大石たいせきあつまってくるな」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)