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多人數
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たにんずう
愕いて
頭を
上げると、
今しも
一個の
端艇が
前方十四五ヤードの
距離に
泛んで
居る、
之は
先刻多人數が
乘つた
爲に、
轉覆した
中の
一艘であらう。
それで
彼等の
心には
喰つてやれ、
飮んでやれ、さうして
遣らねば
腹が
癒えぬといふ
觀念が
期せずして
一致するのである。
笊で
運んだ
饂飩が
多人數の
彼等に
到底十
分の
滿足を
與へ
得るものではない。
其處には、
金澤の
人多人數、
移住したるゆゑ、
故郷にて、(加州金澤の新堅町の
云々)と
云ふのが、
次第になまりて(かしや、かなざものしんたてまつる。)
知るべし、
民謠に
註の
愈々不可なること。
忽ち、
暗澹たる
海上に、
不意に
大叫喚の
起つたのは、
本船を
遁れ
去つた
端艇の
餘りに
多人數を
載せたため一二
艘波を
被つて
沈沒したのであらう。
あの
狂氣のやうに
立騷いで
居る
多人數の
間を
分けて、
此柔弱き
夫人と
少年とを
安全に
端艇に
送込む
事が
出來やう? あゝ
人間はいざと
云ふ
塲合には、
恥辱も
名譽もなく、
斯く
迄生命の
惜しい
者かと