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たにんずう
其處には、
金澤の
人多人數、
移住したるゆゑ、
故郷にて、(加州金澤の新堅町の
云々)と
云ふのが、
次第になまりて(かしや、かなざものしんたてまつる。)
知るべし、
民謠に
註の
愈々不可なること。
忽ち、
暗澹たる
海上に、
不意に
大叫喚の
起つたのは、
本船を
遁れ
去つた
端艇の
餘りに
多人數を
載せたため一二
艘波を
被つて
沈沒したのであらう。
声が
籠つて
空へ
響くか、
天井の
上——
五階のあたりで、
多人数のわや/\もの
言ふ
声を
聞きながら、
積日の
辛労と
安心した
気抜けの
所為で、
其まゝ
前後不覚と
成つた。……