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團扇
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うちわ
打水のあと
輕く
庭下駄にふんで、
裳とる
片手はすかし
骨の
塗柄の
團扇に
蚊を
拂ひつ、
流れに
臨んで
立たる
姿に、
空の
月恥らひてか
不圖かゝる
行く
雲の
末あたり
俄に
暗くなる
折しも
垣ごしにさし
出す
我が
團扇、
取んと
見あぐれば
恥かしゝ
美少年、
引かんとする
團扇の
先一寸と
押へて、
思ひにもゆるは
螢ばかりと
思し
召すかと
怪しの
一言、
暫時は
糸子われか
人か
此處へ
來ぬかと
團扇の
氣あつかひ、十三の
子供にはませ
過ぎてをかし。
片肌ぬぎに
團扇づかひしながら
大盃に
泡盛をなみ/\と
注がせて、さかなは
好物の
蒲燒を
表町のむさし
屋へあらい
處をとの
誂へ、
承りてゆく
使ひ
番は
信如の
役なるに、
其嫌やなること
骨にしみて
誰が
思ひにか
比す
螢一
ツ風にたゞよひて
只眼の
前、いと
子及ぶまじと
知りても
只は
有られず、ツト
團扇を
高くあぐればアナヤ
螢は
空遠く
飛んで
手元いかゞ
緩るびけん、
團扇は
卯の
花垣越えて
落ちぬ