可憐かわい)” の例文
あの洋服屋も可憐かわいそうな男だ、四十幾つになって、店はつぶれる、妻には先だたれる、身を寄せるところさえもなくなり
六月 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
無論むろん千葉ちばさんのはうからさとあるに、おやあの無骨ぶこつさんがとてわらすに、奧樣おくさま苦笑にがわらひして可憐かわいさうに失敗しくじりむかばなしをさぐしたのかとおつしやれば
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
と私が先へ寄ッて苦労させるのが可憐かわいそうだから為をおもって言ッて遣りゃアネ文さん、マア聞ておくれ、こうだ。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
瑜ちゃんや、可憐かわいそうにお前はあいつ等の陥穽かんせいに掛ったのだ。天道様てんとうさまが御承知です、あいつ等にもいずれきっと報いが来ます。お前は静かにねむるがいい。
(新字新仮名) / 魯迅(著)
井下伯もせめて娘だけでも世話をしてやらんと富岡が可憐かわいそうだと言ッて、大変乃公を気の毒がっていたとこう言うじゃアないか、乃公は直然いきなり彼奴きゃつの頭をぽかり一本参ってやった
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「あいつは、ええ若いものだったんだ!……可憐かわいそうなこった!」
パルチザン・ウォルコフ (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
そんなら其子そのこくなつてか、可憐かわいさうなとおくさまあはれがりたまふ、ふく得意とくいに、此戀このこひいふもはぬも御座ござりませぬ、子供こどもことなればこゝろにばかりおもふて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「お前さんは乃公おれの話がよく分らないと見えるな。あいつの様子を見ると、可憐かわいそうというのは阿義のことだ」
(新字新仮名) / 魯迅(著)
彼の話によると、彼の勤めている社は実は大へんに可憐かわいそうなことになっているのだそうだ。
六月 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
うそサ、大嘘サ、お梅さんは善いにしてもあの頑固爺がんこおやじの婿になるのは全く御免だからなア! ハッハッ……お梅さんこそ可憐かわいそうなものだ、あの高慢狂気きちがいのお蔭で世に出ることが出来ない!」
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「ところがあの馬の骨め、打たれても平気で、可憐かわいそうだ。可憐かわいそうだ、と抜かしやがるんだ」
(新字新仮名) / 魯迅(著)
奇麗だねあのはと鼻をふきつつ言へば、大巻さんよりなほいや、だけれどあの子も華魁おいらんに成るのでは可憐かわいさうだと下を向ひて正太の答ふるに、好いじやあ無いか華魁になれば
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
奇麗きれいだねはとはなふきつゝへば、大卷おほまきさんよりなほいや、だけれど華魁おいらんるのでは可憐かわいさうだとしたひて正太しようたこたふるに、いじやあいか華魁おいらんになれば
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
金は何としておこす、三之助を貰ひにやろかとあれば、ほんにそれで御座んす、常日つねさへあるに大晦日といふては私の身にすきはあるまじ、道の遠きに可憐かわいさうなれど三ちやんを頼みます
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かねなんとしておこす、三すけもらひにやろかとあれば、ほんにれで御座ござんす、常日つねさへあるに大晦日おほみそかといふてはわたしすきはあるまじ、みちとほきに可憐かわいさうなれど三ちやんをたのみます
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)