取外とりはず)” の例文
それを取外とりはずした猟師のために、やれやれ気の毒なことをしたと悔みを言うものですから、猟師がいよいよ諦めきれなくなりました。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
残るくまなく調べ、繃帯ほうたいもすっかり取外とりはずさせるし、眼鏡もとられて眼瞼まぶたもひっくりかえしてみるというところまでやったんですが、何のるところもありません
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
でも、そうしていても際限がありませんので、レンズの装置を取外とりはずすことなぞはあと廻しにして、私は慌ただしく唯一の相談相手である河野の部屋を訪れました。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
取外とりはずして言いかけて倏忽たちまちハッと心附き、周章あわてて口をつぐんで、吃驚びっくりして、狼狽ろうばいして、つい憤然やっきとなッて、「畜生」と言いざまこぶしを振挙げて我と我をおどして見たが
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
首の周囲まわりの白い布切きれは、私の気づかぬうちに理髪師が取外とりはずして、扉の外で威勢よくハタイていた。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
白翁堂が自ら立って萩原の首に掛けたる白木綿の胴巻を取外とりはずし、グッとしごいてこき出せば、黒塗光沢消つやけしの御厨子にて、中を開けばこは如何いかに、金無垢の海音如来と思いのほか
大して惜しいとも思わずに取外とりはずして来たのである。
議会の印象 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
出来る事なら足だけを取外とりはずして休みたい。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
暫時ざんじなりとも取外とりはずす儀はかなひ難し其故は聖護院宮樣みやさま御配下ごはいか天一坊樣御身分は當將軍吉宗公よしむねこうの未だ紀州公御部屋住おへやずみの時分女中に御儲おんまうけの若君にて此度このたび江戸表へ御下向ごげかうあり御親子ごしんし御對顏ごたいがんの上は大方おほかたは西の丸へなほらせらるべし左樣にかるからぬ御身分おみぶんにて徳川は御苗字ごめうじなりまたあふひ御定紋ごぢやうもんなり其方たちが少しもあんじるには
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
仏頂寺弥助は羽織を脱ぎ捨てて、床の間のよろいをいちいち取外とりはずして、品調べにかかってから、一応覚束ない手つきで
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかし永い間には取外とりはずしも有ると見えて、曾て何かの事ですこしばかり課長殿の御機嫌を損ねた時は、昇はその当坐一両日いちりょうにちの間、胸が閉塞つかえて食事が進まなかッたとかいうが
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
青年達はこの塔の内部の、貴重な金具を取外とりはずして、それを売って生活していたのだった。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
痛む方の御足おみあしへ斯う枕を取外とりはずす時には、何うも男の手では痛いから、女がいけれども慣れないうちは痛いと仰しゃって、わたくしにばかり仰せ附けでございますが、私が居りませんのち
両人は松の枝にひっかかっている鞄を、枝から取外とりはずすと、把柄になわをしばりつけて、鞄を下へぶら下げて下ろした。下に集っていた連中はその鞄が下りてくるのを興味ぶかく見守っていた。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
だから、しげしげ駒井のところへ通うとしても、露骨に言ってしまえば、駒井の懐ろを当て込んで、その信用を取外とりはずすまいと心がけているのでありましょう。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と言って米友は、雨戸の際まで子鷲こわしの入った籠をかつぎ出して、そこで、片手でもって心張棒しんばりぼう取外とりはずし、鍵を上げて、カラリと戸を押開いたものですから、お雪ちゃんが
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
手をのべてその絵馬を取外とりはずし、なお念のために、その絵馬の裏を返して見ますと、そこには、これも相当の老巧な筆で、単に「巳年みどしの男」としたためられてあるのを発見しました。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
結局、金公は、自力ではこの猫を自分の頭から取外とりはずすことができないことになる。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
菅笠すげがさが壁にかけてある。七兵衛はそれを取外とりはずしました。時にとっての暫しの借用——という心で、前に積み重ねて置いて、なお蒲団をかぶって、深く寝るというよりは、隠れるの姿勢におりました。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)