取交とりかわ)” の例文
殿様も贔屓ひいきの孝助だから上げましょうと相談が出来まして、相川は帰りましたのですよ、そうして、今日は相川で結納の取交とりかわせになるのですとさ
少くとも彼等が取交とりかわしていた会話や、僕が綿貫検事から聞出した所によって想像すれば、捜索の結果彼等の蒐集しゅうしゅうし得た事実はの諸点に尽きていた。
悪霊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
大門おおもんを入って、道筋どうすじを左に曲ろうとすると、ふいと向うからやって来て、おたがいにかおを見合せたのは、昨夜、一ぜん飯屋で杯を取交とりかわした小間物屋です。
クララとシューマンとの純潔な情熱は、取交とりかわした手紙や、今に残る幾多の文献によって想像することが出来る。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
と国貞は鶴屋の主人あるじ差向さしむかってしきりに杯を取交とりかわしていた時、行きちが一艘いっそうの屋根船の中から
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その手と手を取交とりかわすには及ばずとも、そばにつきって、朝夕の話対手はなしあいてきのこの汁でごぜんを食べたり、わしほだいて、婦人おんななべをかけて、わしを拾って、婦人おんなが皮をいて
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして、私達は暫く、いつもの様な議論とも、世間話ともつかぬものを取交とりかわすのでした。が、やがて、私はそんな暢気のんきな会話に耐え切れなくなりました。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
小間物屋は七兵衛と一献いっこん取交とりかわして出て行ってしまったあとで、七兵衛はようやく飯を食いはじめながら
のろけをいうようだが互に書附まで取交とりかわして、私は決して他の客へは出ないから交際つきあいでも他へあがってくれるなと云うから、己も他へは登ったことはありゃアしない
あゝすればいとか御腹蔵なく仰せ聞けられて、何うか結納取交とりかわせの所を何分にも御承引下されたい訳で
「御別家様、まず以てとどこおりなく運びましておめでとう存じまする。御結納ごゆいのうはこの暮のうちに日をえらんでお取交とりかわしなさいますように。お婚礼は来春になりまして花々しく」
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
一渡りくやみの挨拶あいさつ取交とりかわされてから、庄太郎はこんな風に切り出すのであった。
灰神楽 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
差出さしいだすを新三郎が手に取上とりあげて見ますれば、飯島の娘と夢のうちにて取交とりかわした、秋野に虫の模様の付いた香箱の蓋ばかりだから、ハッとばかりに奇異きたいおもいを致し
司法主任と刑事とが、不気味さをまぎらす様に、そんな会話を取交とりかわしていた。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
起請まで取交とりかわして心中を仕ようとは思いません、実に憎い奴とは思いながら、誠に不憫な事をして、お前の心になって見れば、立腹するかどはない、お前には誠に気の毒で
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
こんな風の会話を取交とりかわしたあとで、六郎氏の殺人犯人が大江春泥の平田一郎に相違ないこと、彼がこの次には静子をも殺害しようと企らんでいることを、静子と私とが同道で警察に申出で
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
殿様がお承知の上孝助殿をむこにとる事に極って、明日あすは殿様お立合の上で結納取交とりかわせになると云いますと、娘は落涙らくるいをして悦びました、と云うと浮気の様ですが、そうではない
若い私達は、子供が指切りをする様な真似をして、幼い贈物を、取交とりかわしたものである。私は一ヶ月の給料をはたいて、初代の生れ月に相当する、電気石をはめた指環を買求かいもとめて、彼女に贈った。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
武田の重二郎が当家へ養子に来てくれる様にうから話はして置いたが、ようやく今日話が調とゝのったからお母様と相談して、善は急げで結納の取交とりかわせをしたいが、媒妁人なこうどは高橋をもってする積りで
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
仮令たとえ浪人者でも、一人の娘を妾にはせん、婚礼の式は正しゅうしなければならん、お前の先生は嫁の貰いようを御存じないか、見合いも致さず、結納ゆいのう取交とりかわさず、媒妁も入れなければ婚姻にはならん
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かねてこの浦賀に於ても雷名轟く処の石井氏の妹御いもとご、願っても是れは出来ん処をおっかさまもお妹御も御得心で誠に有難いことで、大夫も殊無ことのうお喜びでございます、どうか結納の取交とりかわせを致そうとして