ちょう)” の例文
仔細は、窺いえませんが、どうやら、宮廷の若公卿や一味の武者輩のうごきについて、六波羅にても、はや捨ておかれぬ謀反のちょう
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けたたましく郵便脚夫きゃくふ走込はしりこむのも、からすが鳴くのも、皆何となく土地の末路を示す、滅亡のちょうであるらしい。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
みんなは毎日その石でたたんだねずみいろのゆかすわって古くからの聖歌せいか諳誦あんしょうしたりちょうよりももっと大きな数まで数えたりまた数をたがいに加えたりけ合せたりするのでした。
遊民の多きを亡国のちょうだなどゝ苦労するのは大きな間違いだ。文明の進んだ富める国には、必ず此の遊民がある。是れ太平の祥であると云って何も遊民を喜ぶのではない。
燕王の宮殿堅牢けんろうならざるにあらざるも、風雨の力大にして、高閣の簷瓦えんが吹かれてくうひるがえり、砉然かくぜんとして地にちて粉砕したり。大事を挙げんとするに臨みて、これ何のちょうぞ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
とにかく三つの外惑星が双魚座ピスケスと連結するという天体現象は、大凶災のちょうとされているのだ。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
わが子一枝(カズエ)、一日ごとに変化のちょう歴然れきぜんたるものあり。成長に向う変化である。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
即ち十月一日より隔時観測を始めたり、折節おりふし天候不穏のちょうありしを以て、翌日剛力ら一同を下山せしめしため、予はいよいよ俊寛もよろしくという境遇となり、全く孤独の身となれり
瀬戸内の波いと穏やかに馬関ばかんに着きしに、当時大阪に流行病あり、ようや蔓延まんえんちょうありしかば、ここにも検疫けんえきの事行われ、一行の着物はおろか荷物も所持の品々もことごとく消毒所に送られぬ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
全く仏法滅亡のちょうあらわして居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
小田原の北条氏康ほうじょううじやすと戦って、今川方に敗戦のちょうが見えるや否、不利とならぬ間に和議の盟約をむすんで、駿府を救ったのもこの僧であった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
のう熟〻つらつら考うるに、今や外交日に開け、おもて相親睦あいしんぼくするの状態なりといえども、腹中ふくちゅう各〻おのおの針をたくわえ、優勝劣敗、弱肉強食、日々に鷙強しきょうの欲をたくましうし、しきりに東洋を蚕食さんしょくするのちょうあり、しかして
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
すでに当城へ臨むときに、もし貴公がいささかの異心でもさしはさみ、敵に通ずるごときちょうあらば、直ちに貴公と刺しちがえる覚悟でござった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天下一統の大業を完成して、後漢の代を興した光武帝から、今は二百余年を経、宮府の内外にはまた、ようやく腐爛ふらん崩壊ほうかいちょうがあらわれてきた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とにかく、りにった悪玉と悪玉とが、この夜、手を結んだのは、弦之丞の身にとって、怖るべき不幸のちょうだ。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、それもやがてまた、幕府瓦解がかいちょうをあらわした、安政六年の失火の時、本丸炎上の紅蓮ぐれんをあびて、遂に永遠のそうを失い、もとの土に返ってしまった。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「吹上の悪戯わるさは万太郎の所為しょいじゃ。そして、それを不吉のちょうらしく、尾ひれをつけて言いふらすものは、紀州家にそねみをもつ気の小さい大奥の女どもじゃ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
潰滅かいめつちょうが見えてきた。その方面の敵は、不肖ふしょう池田勝三郎が当って蹴ちらしてみせる」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
観るに、炎漢えんかんの気すでに衰え、帝星光をひそめ、魏王の乾象けんしょう、それに反して、天を極め、地を限る。まさに魏が漢に代るべきちょうです。司天台の暦官たちもみなさように申しておりまする
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
源平対立のちょうは見えても、戦いはなく、むしろ、地下ちげ階級の武者全体が、貴族政治の崩壊によるこんどの戦乱を、自己たちの地位向上の絶好な機会となし、赤旗も白旗も同陣営にっていた。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
袁術は、憤怒を発して、とうとう自暴自棄のちょうをあらわした。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)